【羽後で「動き」のある人に聞いた!】
ウゴキーマンvol.6 高山紀久恵さん

ウゴキーマンとは、羽後町を舞台に「動き」のある人と、地域の「キーマン」を組み合わせた造語です。羽後町で活躍されている方、住んでいる方がどんな人なのか、普段はどんなことをしているのか、どんなことを考えているのか。UGONEWSで深掘りしていくことによって、より多くの方々に、その「人」をお届けします!

今回は、羽後町出身で画家として活動している、高山紀久恵さんにインタビュー。高山さんは西馬音内盆踊りを題材にし、「京都 日本画新展2024」で見事、奨励賞・京都府知事賞を受賞しました。いよいよ明日に迫ってきた西馬音内盆踊り。そんな盆踊りで名誉ある賞を受賞した高山さんについて本記事でご紹介します!

【氏名】高山 紀久恵(たかやま きくえ)

【職業】大阪芸術大学 教授の助手

    ※取材時は羽後町在住

【出身】羽後町(足田地区)

【趣味】散歩・読書

幼少期から好きだった美術の道へ。

ーこの度は受賞、おめでとうございます!まずは高山さんが現在どのような活動をしているかお聞かせください。

〈高山さん(以下同じ)〉大阪芸術大学を昨年の春に卒業して、現在は地元の羽後町で創作活動をしています。この後は、大阪芸術大学の大学教授の助手として働きながら、創作活動を行う予定です。

ー遠い大阪の地で学んでいたのですね。後ほど詳しく伺います。次に、美術の道に進むきっかけや、現在に至るまでの過程について教えてください。

幼い頃から絵を描くことや、芸術に触れることが好きでした。中学生までは羽後町で過ごしていたのですが、中学校の美術のコンクールなどで受賞することがあり。将来は美術の道に進みたいな、と思うようになりました。中学3年生のある日、家族で北海道旅行に行く機会があり、とある電鉄の雑誌に美術高校の入学者募集の記事が載っていました。それを見た時に、「この高校に進もう」と。家族の反対などもありましたが、私の意思が固かったこともあり、最終的には北海道の音威子府(おといねっぷ)にある高校に進学しました。

ー運命的な旅行でしたね!しかし好きなこととはいえ、自身の選択に迷いや抵抗はなかったのでしょうか?

その時はあまり感じなかったですね。美術高校なので3年間美術漬けでとても楽しかったです。また友人も美術が好きで来ているので、感覚が似ている人が多かったのもあるかと。ただ、北海道はここよりも寒くて冬は辛かったですね(笑)。

ー高校生活で集中して好きなことを学べるのはたしかに羨ましいです!高校は北海道だったのに、なぜ大阪の大学に進学したのですか?

普通は疑問に思いますよね…。実は慕っていた高校時代の美術教員の母校で、「いい先生が揃っているからここがおすすめだよ!」と。高校3年生から日本画を勉強し始めたため、大学でより日本画を極めたいな、と思い大阪芸術大学を選びました。

ーこれまた運命的な出会いですね…。ちなみになぜ日本画に魅了されたのでしょうか?

日本画は洋画と画材が違い、膠(にかわ)と呼ばれる、画面と絵の具を接着する素材を使うのが特徴です。また、洋画のように油絵の具を使うのとは違い、「砂っぽい」岩絵の具を使用します。ざらざらしたタッチになるのですが、そうした日本画の淡さや奥深さに魅了されました。

ー私は美術はそこまで詳しくありませんが、日本画独特の深みはありますよね。その後大学ではどのような活動をしましたか?

日本美術展覧会、通称『日展(にってん)』と呼ばれる展覧会に年に3回程度、作品を応募していました。テーマは展覧会によって様々ですが、これまでは「花」「人物」などをテーマに、抽象的な雰囲気の絵が好きでよく描いてきました。

受賞作品「継ぐ」に込めた意味とは。

ー次に、今回の受賞作品に至るまでを教えてください。

田舎ならではの落ち着いた環境で絵を描いてみたいと思い、大学を卒業してから1年間、羽後町に戻り創作活動をしてきました。今回受賞した展覧会はフリーテーマだったため、せっかくなら地元を題材に絵を描いてみたい、と思い。そこで、羽後町の誇る文化、『西馬音内盆踊り』を題材に決めました。受賞作品は、普段よく描くテイストではないのですが、西馬音内盆踊り特有の妖艶さや情緒的な雰囲気を表現できるように、実際に西馬音内盆踊りを観に行って研究をしました。

ーなるほど、そういった経緯だったんですね。研究してみて、「ここはこう表現した方がいいな」と注意して描いた箇所もあると思います。

そうですね。一番は西馬音内盆踊り全体の雰囲気を壊さないように。その上で、いちばん気を遣ったのは「手」の描き方です。踊り手の手の動きが、西馬音内盆踊り特有の雰囲気を醸し出す大切な要素だと感じたためです。簡単なようで、本当に繊細な作業でした。また着物の柄も西馬音内盆踊りの特徴なので、丁寧に描き上げました。

ー今のお話を聞いて、細かいところまで丁寧に描いた様子が見えました。作品の題名「継ぐ」にこめられた意味を教えてください。

これまでも何回か盆踊りを観たことはあるのですが、改めてじっくりと観察すると、あることに気づきました。それは、子ども、お母さん、おばあちゃん…世代を超えて踊り継がれていること。それだけでなく、代々受け継がれてきたこの踊りを、顔を隠して先祖と一緒に踊る。そしてまた次の世代へ受け継がれる。西馬音内盆踊りだからこそ、ずっと変わらず継承してきたんだと。この奇跡を作品を通して伝えられればと思い、「継ぐ」という題名にしました。

ー本当にそのとおりですね。今のお話を聞いて改めて絵を観てみると、高山さんが伝えたかったことがより感じられます。

若手画家の描く未来とは。

ー最後に高山さんのこれからについて教えてください。今後、どのように活動していきたいと思っていますか?

将来的には、羽後町に戻ってきて、絵に関係する仕事に就きたいと思っています。羽後町は芸術にすごく向いている環境だと思っていて。田舎は時がゆっくり進む感覚があり、落ち着いていて創作に集中できますし、この何気ない風景や空気感がとても好きなので。

ー羽後町で活躍されるのを楽しみにしています!高山さんが考える羽後町の良さ、そして今後どういう地域にしたいか、地域への想いを教えてください。

羽後町の良さは、人が優しいこと、景色がいいこと。そして田舎すぎないことですかね(笑)。人口は減っていくかもしれませんが、「羽後町っていいな」と思う人がずっと程々に居続けてくれたらいいなと思います。

個人的には、道の駅で開催しているようなイベントがもっと増えるといいな、と。美術作品を売るようなフリーマーケットや、一緒に作品を作るワークショップなど、すごくいいなと思います。私自身も美術の魅力を地域に伝えていけるように活動していきたいと思います。

 

以上、高山さんへのインタビューでした。取材を通して、ずっとキラキラした目で美術のお話をしていて、本当に美術が好きなんだろうな、と感じました。また、好きなことを貫く姿勢は、未来を担うこれからの世代にとっても大切なことだと改めて考えさせられました。

『京都 日本画新展2024』の受賞作品「継ぐ」は現在、町に寄贈いただいています。羽後町役場で見ることができるので、気になる方は役場でお越しください。

次回のウゴキーマンは、羽後町でそばの生産・製粉加工を行う、株式会社そば研藤原洋介さんのインタビューです。お楽しみに!

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)