【取材レポート|9月21日〜23日開催】
西馬音内の秋祭りが今年もやってきた!

2024年9月21日〜22日、毎年恒例の西馬音内御嶽神社の祭典が行われました。1年間に行われる神社のお祭りの中で最も大きく重要なお祭り。西馬音内御嶽神社の例祭は、稲刈り前に豊作を願う「予祝行事」としてこの時期に行われてきたそう。元は3日間でしたが、第三土曜日に行われるようになってからは週末の2日間に行われています。

初日の21日が宵祭(よいまつり)、二日目の22日が例祭(れいさい)。例年は例祭当日にいわゆる「行列」と呼ばれる神輿渡御(みこしとぎょ)が町中を練り歩く祭典ですが、今年は両日とも雨。警報発令の影響もあって行列はやむなく中止となり、例祭当日と翌日に山車1台ずつが町内を巡る形となりました。

雨の宵宮、本町通りに響くサイサイの音

9月21日の夕刻。西馬音内地区に入ると、夜道を挟む家々の玄関に、灯篭が煌々と光っています。裏に家紋などが描かれた灯籠を家の前に掲げ、その下に松飾りを置いたり芝生や砂を敷いたりするのが西馬音内の風習とのこと。御嶽神社では、翌日に例祭の神事を執り行うことを神様にお伝えする宵祭の神事が行われました。

どこからか聞こえる太鼓の音を追いかけていくと、本町通りに露店が並んでいるのが見えてきました。しかし、18時ごろにやっと上がった雨に町はジメッとして客足もまばら。「こんなに人が少ないのは初めて」と語る出店者も。

何十年も続く西馬音内御嶽神社の祭典。「当時の子どもたちは、西馬音内盆踊りよりも御嶽神社の方が楽しみだった」そう。

もともと西馬音内の送り盆行事である西馬音内盆踊りは出店も5店舗ほど。それに対して御嶽神社の祭典は本町通りに50を超える店舗が軒を連ね、今では見なくなった亀すくいや金魚掬いなどの露店、サーカスや余興も行われたそうです。本町通り沿いの店舗も以前は多くが夜遅くまで営業していたそう。この日は数軒ほどが暖簾をあげていました。

本町通りは歩行者天国。21日は昼時から夜まで、22日は朝から夕どきまで車両通行止めとなります。しばらくすると笛と太鼓の音が聞こえ、例祭の開催を知らせる「サイサイ」が通り過ぎながら賑やかな音色を響かせました。「明日は子どもたちの山車が通る。賑やかになるよ」と警備員さんが教えてくれました。

例祭当日。大雨警報で行列は中止に

翌22日。御嶽神社では10時から例祭の神事が行われ、朝から参拝者が訪れました。一方で風雨と寒さを考慮し、総代の話し合いで「神輿渡御(みこしとぎょ)」は中止に。大雨警報の発令もあり子どもたちの体調への懸念や、強風で行列の道具を持つのが難しい等の懸念から、滅多に中止にならない行列も、今年は中止を余儀なくされました。

例年は10時から昼時にかけて、2時間ほど西馬音内を歩く行列。境内の小屋に入ると、準備されていた神輿渡御の道具たちが並んでいました。これらも今年は日の目をみないまま、倉庫に仕舞われることに。建物に待機していた役員の方が「出発前にはこんなふうに外に並べるんだよ」と、一直線に並べられた道具の写真を見せてくださいました。

一方で西馬音内御嶽神社の祭典では、神輿渡御で神輿の後ろに山車がついてまわるのが恒例となっています。9月初旬から約3週間を費やし、それぞれの地区で山車の制作を進めてきた西馬音内4地区。行列の中止が発表された後、4地区のうち五町山車実行委員会は山車を引いて町内を歩きました。

「自分たちも子どもの頃、父さんたちが作った山車を引いてきた。その思い出を子どもたちにも作ってあげたい。」五町山車実行委員会(中町、栄町、岩本、美里、桜井)の方々に山車を引いた理由を聞くと、子どもたちを思う声が聞こえてきます。

この地区では、その年の委員長の発案で山車のテーマを決めるそう。今年の題材はゲームキャラクター「星のカービィ」で、大きなカービィの乗った山車を完成させました。町の方々からの寄付で制作した山車をお披露目するため、雨の降り続く町を山車を引いて巡りました。

町を歩き終えると片付け作業です。山車はカービィの貰い手のところへ行くため、先に山車をしまっていた小屋を解体します。まだ雨の降る中、雨具や厚着をして寒さに負けず作業を進めます。専門の職人がいるのかと思いきや、地域の方々が自らの手ですべての作業を担っているそう。みなさん、とにかくパワフルです。

「子どもたちが楽しみにしているから」翌日に山車出行

9月23日。降り続いた雨も止み気温も回復してきた例祭翌日に、本町上・本町下・南町の3町による山車が出陣しました。この地区の山車のモデルはNHKの大河ドラマ。今年は現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」を題材に、紫式部をメインとした山車を完成させました。

当地区では、小学一年生が姫や将軍に扮して山車に乗るのが恒例となっています。今年の一年生は4名。うち一人は「姫になるんだ、と楽しみにしていた」という親御さんの語りの通り、例祭当日の中止の報を聞いて落ち込んでいたそう。翌日に念願が叶い、嬉しそうな表情を見せました。4名は山車に乗り、町を見渡しながら西馬音内を巡りました。

お祭りが終わると、ながや趣味の店のお菓子がいっぱい詰まった袋をもらって家に帰ります。

一方の大人たちは片付け作業へ。山車は段ボールや釘一本まで丁寧に取り外して分別し、山車を入れていた小屋も協力して解体します。山車が完成するまでに数週間、解体は数時間。今年の思い出を惜しみながら、ま来年の祭典に向けて着々と準備を進めていきます。

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)