みなさんは『アイガモ農法』をご存知ですか?アイガモ農法とは、水田にカモを放し飼いし、無農薬による安全な米と鴨肉を同時に生産する農法です。日本では、古くは平安時代や安土桃山時代まで遡る伝統的な農業といわれてといわれており、近代になるにつれ農薬の普及によって徐々に衰退していったとされています。羽後町では、西馬音内・橋場地区で酒屋を営んでいる「えのもと酒店」の店主・榎本さんがアイガモ農法でお米を作っています。町内では珍しいアイガモ農法について、榎本さんにお話を伺いました!
自然に優しいアイガモ農法
アイガモ農法は畜産と稲作を同時に行う農法で、さまざまなメリットがあると言われています。
一つ目に環境にやさしく安全な点。カモが害虫や雑草を食べてくれるため、害虫駆除や除草の手間がかからず、無農薬で安心・安全なお米を育てることができます。二つ目に、カモが水田を泳ぐことで泥水をかき回してくれる点。水田の中に酸素を供給するため、稲の根が丈夫になる、光合成が抑えられて雑草が育ちにくくなるなどの効果があります。三つ目に、アイガモの糞が肥料になる点。化学肥料を使わず、カモの糞によって稲に養分を与えるため安全です。
上記のようなメリットはありますが、カラスやたぬきなどの害獣に襲われないように柵やネットを張らなければならない、カモが泳いで稲を倒してしまうことで欠株が多くなってしまうなど、管理する上で大変なことも多いそう。
アイガモ農法に榎本さんが関わり始めたきっかけは、義父の米山仲雄(よねやまなかお)さんにあります。28年前から、米山さんご夫婦がアイガモ農法をしており、高齢化に伴って榎本さんがお手伝いをすることに。2年ほど前から、本格的に榎本さんも栽培に取り組んでいます。米山さん夫婦が始めた当初は栽培方法が確立されておらず、従来の方法とも異なるため、地域の理解を得るのが大変だったそう。そんな中でも、自然と共生した有機農法に誇りを持ち、何年も栽培を続けてきました。
榎本さんの場合は、山形県天童市に拠点を構える「全国有機農法連絡会」の指導を仰ぎ、山形の業者からカモを購入しています。田植えのおよそ1ヶ月前から、田に放つ前の準備として庭に仮設プールをつくり、泳ぐ訓練などを行うとのこと。田植えの時期にカモを田んぼに放ち、そこから先は慣行農法と同様に、お米を栽培していきます。
稲に実がつき始めるとカモに食べられてしまうため、カモの仕事はその前で終了です。田んぼで大きく育ったカモは食用として流通されます。
以前、高瀬小学校の5年生や翔北高校ビジネス科の生徒たちの社会見学を受け入れたことがあるそう。このように、カモを通して人と人との繋がりが生まれるのも、アイガモ農法の素晴らしいところですね!
アイガモ農法で育てている水田へ!
7月某日、カモたちがそろそろお役御免になるということで、新成・郡山地区の榎本さんの田んぼへお邪魔しました。榎本さんが飼育しているカモの頭数は10羽。仲良く固まって集団行動をしている姿がとてもかわいい…。
田んぼの周囲には、カモたちが逃げないようにネットを張っています。榎本さん曰く、ネットを張る作業が重労働で、とても骨が折れるそう。しかし、かわいいカモたちを見ては癒され、また頑張ろうと思えるとのことでした。
たしかに欠株になっている箇所も見受けられましたが、ほとんどの稲は丈夫に育っています。カモたちは害虫や雑草などを食べながら元気そうに泳いでいました。
アイガモ農法で育てたお米の稲刈りも
9月某日、榎本さんにお誘いいただき、稲刈りにも同行しました。今年の収量は昨年よりやや少なかったとのことですが、カモたちが頑張ってくれたおかげで、粒が大きく生き生きとしたお米が実りました。
義父の仲雄さんと共同作業で稲刈りを進めていきます。長年二人でお米を育ててきたからこそ、息がピッタリ。仲雄さんは御年88歳ということですが、元気にコンバインを運転されている姿が印象的でした。
収穫したお米は熱を加えず、乾燥機の送風だけで乾燥させていくとのこと。より天日干しに近い形で乾かすことができるそうです。なるべくお米に負担をかけないという徹底ぶりが伺えます。
アイガモ農法で育てたお米は、えのもと酒店のオンラインショップから購入できます!榎本さんが丹精を込めた絶品の無農薬米をぜひご賞味あれ!
▼えのもと酒店 オンラインショップ
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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)