【西馬音内盆踊り特集2024-①】
盆踊り衣裳と「藍と端縫いまつり」

重要無形民俗文化財に登録され、2022年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された西馬音内盆踊り。観に来ることを計画されている方もいるのではないでしょうか。例年8/16〜8/18の3日間で、今年の本番は8/16(金)、8/17(土)、8/18(日)の日程で行われます。

本番までいよいよ2週間前に迫り、地域ではさまざまなイベントや準備が行われています。UGONEWSでは「これを知っていれば西馬音内盆踊りを何倍も楽しめる!」という記事を集め、本番まで数回にわたって西馬音内盆踊り特集をお届けします。

初回では、先週末に行われた「藍と端縫いまつり」の写真レポートとともに、西馬音内盆踊りの2種類の衣裳と藍染めについて特集します!

西馬音内の通りが1日限定の美術館に

2024年8月4日(日)の日中、羽後町の西馬音内地区にて、「藍と端縫いまつり」が行われました。西馬音内盆踊り本番を前に、展示として踊りの衣装を虫干し(むしぼし)する恒例イベント。当日は30度を超える真夏日でしたが、竿燈祭りなどにあわせて県外からの来訪もあり、本町通りを中心に行き交う人の姿が見られました。

「虫干し」とは、普段箪笥などにしまっている衣類を外に出して陰干しし、湿気を飛ばすことで害虫やカビを防ぐ作業のこと。西馬音内盆踊りの魅力と踊り衣装の歴史や文化、藍と端縫いの魅力を伝えるべく始まったイベントが「藍と端縫いまつり」です。

「藍と端縫い」と書かれた暖簾のかかる建物で各家所有の着物が展示されたほか、西馬音内盆踊り会館のホールでは藍染絞り愛好会の作品展示が実施されました。また、この日にあわせて町内のフラワー教室の展示なども行われました。

西馬音内盆踊りを彩る「踊り浴衣」と「はぎ衣裳」

西馬音内盆踊りの代表的な衣装は「踊り浴衣」と「はぎ衣裳」の2種類。

◯踊り浴衣(おどりゆかた)

「踊り浴衣」の多くは手絞りの藍染め。それぞれの家で作られたものものあれば、専門店や藍染をしている方に依頼して作られたものもあるそう。生地を染めてから縫い合わせる方法と、縫い合わせてから染める方法があり、その絵柄も浴衣によってさまざまです。

◯はぎ衣裳(端縫い衣裳はぬいいしょう)

色合いの華やかな「はぎ衣裳」は、さまざまな絹の端切れを左右対称に接ぎ合わせて縫いあげた着物。中には、100年以上前に使われていたという着物の端切れを使ったものも。一般的に着用される踊り浴衣に対して、はぎ衣裳は踊りが上達してから着るものといわれています。

「端縫い衣裳」という名称が広がりましたが、染織家の縄野三女氏によれば「はぎ」と「はぬい」は意味の異なる言葉。「はぎ」は布を接ぎ合わせることで、「はぬい」は布がほつれないように端を折り返して縫うこと。昭和初期の頃までは主に「はぎ衣裳」と呼ばれていたといいます。(縄野三女「西馬音内盆踊衣裳に寄せて」『羽後路』, 秋田県文化財保存協会 羽後町支部, 2006)

「藍と端縫いまつり」にも多くのはぎ衣裳が展示され、各家で「ここは曽祖母の着物で、ここには帯を使っています」など着物に宿る記憶を語っていただきました。各家のご先祖が使っていた着物の端切れを縫い合わせた着物を身にまとい踊るところに、「ご先祖さまと共に踊る」という西馬音内盆踊りの特色が現れています。

藍染めの仕組み

「藍と端縫いまつり」も終わりにさしかかる頃、本町通りにある赤川呉服店の店頭で藍染めを見せていただけることに。藍染めの「絞り(しぼり)」では、折りたたんだり縫い付けたりした生地を染料に浸すことで着色し模様をつけます。天然染料と化学染料があり、色の染まり方やコストに違いがあるそう。

染料を見せていただくと、藍染めの染料ながら黄色っぽい色をしています。実は藍染めの染料はpH11〜12度の強アルカリ性。それが空気に触れて酸化することで初めて藍色に発色する仕組みなのだそう。藍染めだけれども藍色の染料につけるわけではないというのが、なんだか不思議な感じです。

そーっと布を染料に入れ、しばらく浸します。染料から取り出した布は…解説の通り黄色っぽく染まっていました。

これが空気に触れて酸化することで、だんだんと藍色に発色していきます。数十秒経つと藍の色がはっきり出てきました。

染料につける回数を増減させることで、染まる色の濃さを調整するのも藍染めならでは。染めたい部分が十分に染まったら、縛っていた紐や折り目を解いていきます。

すると…綺麗な模様が現れました!今回藍染を見せてくださった赤川呉服店の店主・貢一郎(こういちろう)さんと、パシャリ。

今回は規則性のある模様を例に見せていただきましたが、西馬音内盆踊りの浴衣を見てみるとそれぞれに複雑な模様や細かい絵柄が入っているのがわかります。作りたいデザインを再現するには、相当に高度な技術が必要になるでしょう。模様にも持ち主の思い入れが現れる、一品ものの藍染め浴衣の柄は一見の価値ありです。

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)