町の観光スポットについて話をしていると、たまに名前が出てくる「ガリメギ」という言葉。カリメギ?ガリメキ?。調べてみると「刈女木」と書いて「がりめぎ」と読む、不思議だけどなんだか惹きつけられる、面白そうな湿原があるではありませんか。
「いつか必ず行きたい!」そんな思いをずっと抱えていましたが、先日ようやく訪れることができました!「静かに自然と向き合える場所」として親しまれているこの湿原。今回は、羽後町の知られざる魅力的なスポット「刈女木湿原」について、実際に歩いた感想をレポートします!
刈女木湿原ってどんな場所?
羽後町田代明通山の麓に広がる「刈女木(がりめぎ)湿原」は、昭和48年(1973年)に当時田代小学校の教諭だった藤原正麿先生によって発見され、その後2年間の調査の結果、学術的にも貴重な低層湿原として注目されました。梨の木峠より沢づたいに四つの沼がある典型的低層湿原で、湿原植物や山地性植物など、貴重な植物が生育していることから「秋田県自然環境保全地域」に指定されています。
また、早春から晩秋にかけて常時季節の花を見ることができます。確認されている植物は64種に及び、そのうち固有種「ガリメギイヌノヒゲ」をはじめ、ザゼンソウ、ミツガシワ、ミズチドリ、ミズギク、モウセンゴケ、トキソウなどが自生しています。これほど多様で豊かな湿地植物の宝庫は、秋田県内でもかなり希少。まさに自然の楽園といえます。野鳥のさえずりや、風に揺れる木々の音が絶えず聞こえ、森に包まれているような感覚を味わえます。
新緑の刈女木湿原を実際に歩いてみた!
訪れたのは初夏のよく晴れた日。案内してくださったのは、県から刈女木湿原の管理を依頼されている藤原さんと、藤原さんのご友人の小西さんの2名。藤原さんの先導のもと、生息している植物を紹介していただきながら、刈女木湿原の奥まで歩いてきました。一番驚いたのは、植物に関することで知らないことはないのでは、と思うほどの藤原さんの植物に対する圧倒的な知識量。藤原さんに教えていただいた豆知識などを交えながら、写真と共に紹介していきます!
まずは沼に浮かぶこちらの植物。家紋の模様などにも使われる「ミツガシワ」。ミツガシワが見え始めたら、湿原のはじまりの合図とのこと。湿原にどんどん足を踏み入れていくにつれ、ワクワクが増していきます!
道中には「ワラビ」や「ゼンマイ」などの山菜も生えていました。山菜などの山地性植物と、湿地植物が共生しているのが刈女木湿原の特徴だそう。
「ウゴツクバネウツギ」は名前に「ウゴ」が入っている通り、昔の羽後地方を中心に見られる珍しい植物。白い花が羽子板でつく羽根に似ていることから、「ツクバネ」と命名されたそう。よーく見るとたしかに似ているかも!
刈女木湿原の特徴である4つの沼の一番奥にある沼に到着です。沼には東北北部の湖沼に見られる水草「エゾヒルムシロ」に加え、「ジュンサイ」も生育していました。
沼の近くには、「トキソウ」と呼ばれる小さくてきれいなお花が。藤原さん曰く、今日のベストショットなのでは、とのこと!
と、ここまで様々な植物を紹介しましたが、藤原さんに教えていただいた植物の中のごく一部。藤原さん曰く、散策をした新緑の季節がベストシーズンだそう。案内していただいた藤原さん、小西さん、本当にありがとうございました!
藤原さん(写真左)、小西さん(写真右)
刈女木湿原を歩いて感じた「豊かさ」
足元に小さな花が静かに咲き、耳をすませば鳥の声が聞こえてくる。派手な観光地とは違い、その分だけ自然と向き合える時間がゆっくりと流れる。刈女木湿原は、「豊かさ」を体現している、そんな場所ではないかと感じました。
同時に感じたのが、環境問題に関して。刈女木湿原の湿地も長い年月をかけてだんだんと乾いてきており、乾いた湿地には柳が生えてきていました。近年、人的要因や地球温暖化などの影響で、世界中の湿地が減少していると報告されています。ある指標によれば、地球に存在していた湿地帯の80%以上がすでに消失しており、その3分の1以上が消滅したのは1970年以降。これは他のどの主要な生態系よりも速いペースです。
湿原は、たくさんの生きものを育む場所であると同時に、水をきれいにしたり、気候を安定させたりと、大切な働きをしています。刈女木湿原のような自然が未来にも残っていくように、私たちも自然との関わり方を少し見直してみることが、これからの環境を守る一歩になるのかもしれません。
日常の喧騒から少し離れて、ただ散策する時間。何もしない贅沢を味わえる、そんな湿原の魅力を、ぜひ一度体験してみてください。自然の中にあるスポットのため、クマ対策や熱中症予防は入念に。羽後町の新たな一面が、きっと見えてくるはずです。
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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)