【UGO㊙︎STORY第4弾|保存食】
厳しい冬を乗り越える、食の知恵

羽後町に秘められた歴史や文化を一から学び、特集記事で紐解く「羽後の歴史」もとい「UGO㊙︎STORY(ウゴヒストリー)」。今回は、羽後町の冬を乗り越える知恵から生まれた「保存食」をテーマに取り上げます!

いまや大抵の料理はインターネットで調べればレシピが出てくる時代。保存技術の発達や家庭の形の多様化により、食卓の風景も日々刻々と変化しています。一方で歴史を紐解くと、村や家ごとに受け継がれてきた独特な食文化が存在します。保存食も、その一つ。

今回は、2月18日(水)に行われた保存食づくりの講習を取材しました。当日の様子とともに、羽後町の保存食の今をお届けします!

毎年恒例の料理教室、今年のテーマは「保存食」

厳しい降雪と短い日照時間に見舞われる冬。そんな気候条件の下、独自に発達した文化の一つが「保存食」です。秋田県の代表的な保存食である「いぶりがっこ」を筆頭に、羽後町の食卓には多種多様な食材が並びます。

2026年の1〜2月にかけて開催されたのが「料理教室〜保存食の”い・ろ・は”〜」。中央公民館の調理教室を貸し切り、羽後町の郷土食レストラン「農家キッチンあるもんで」の皆さんによる全2回の講習が行われました。

料理教室には町内から計16名が参加。1月29日(木)に行われた第1回では、山菜の戻し方から食べ方までを実践を交えながら講習。2月18日(水)に行われた第2回では、にんにくみそと塩麹づくりに挑戦しました。

家で簡単に作れる!あるもんで流「保存食レシピ」

今回の料理教室から、保存食のレシピをかいつまんでご紹介!

まずはニンニク味噌作り。酒・三温糖・醤油を鍋に入れて中火で加熱し、火を弱めたらニンニクを加えてかき混ぜます。火を止めて麹を加え、よく混ぜたら出来上がり!1週間ほどで味がなじみ、一ヶ月ほど置くとベストな味わいに。

ニンニク味噌の用途は無限大。味噌代わりに料理に使うほか、きゅうりにつけて「無限きゅうり」にも。今回は、おにぎりにニンニク味噌をたっぷり塗って表面を炙り、焼きおにぎりでいただきました。

《ニンニク味噌》ニンニクを加えたら、焦げ付かないように弱火でかき混ぜるのがポイント

塩麹は米とザラメと塩を混ぜてから、少量の焼酎を加えます。温度が下がったら麹を入れ、よく混ぜます。麹は温度が高い状態だと菌が死んでしまうため、手で触れられる70度以下に冷ましてから入れるのがコツ。常温で3ヶ月おけば、塩麹の完成です。

1年で良い麹になり、大体3年ほど保存可能。基本的に常温保存ですが、白カビが生えた場合はカビ部分を取って冷蔵庫に入れるのがオススメ、とのこと。

《塩麹》多めの水で炊いたお粥状の米に、ザラメと塩を加えてかき混ぜる

講座の最後にはチャイづくり。チャイに使われるスパイスはどれも身体にいいんです。美味しいチャイを飲むだけで腸が整うなんて、まさに一石二鳥ですね。

受け継がれてきた保存食、どう伝えていくか

かつて「母から娘へ」「姑から嫁へ」代々受け継がれてきたという羽後町の食文化。一挙手一投足を見ながら教わりながら、その家の味を覚えていったそう。自然環境や年間を通した行事・しきたりとも深く結びつき、世代を超えて育まれてきました。

特に冷蔵庫がない時代の食卓を支えたのが保存食です。天日や煙を使って乾燥させたり、砂糖や塩を使うことで保存性を高めたり、自然の力を使った様々な保存食作りが行われてきました。

料理教室で扱われた食材の他にも、羽後町の郷土史には、次のような保存食が記されています。

・塩魚:さけ、ます、かど(にしん)、はたはた、いわし、皮くじら、筋子、塩辛(主にイカ)、ほっけ、たら
・乾魚:身欠にしん、かすべ、乾くじら、ほしたら、鰹ぶし
・貯蔵野菜:ぜんまい、わらび、ふき、かたくりの葉、里芋の茎、大根、きのこ類、大根の葉、さく

(羽後町郷土史編纂委員会『羽後町郷土史』, 1966, p.901)

田代地区の行事と行事色をまとめた書籍『田代の行事食』には、こんな記述も。

「あの頃は、ハタハタが安価の魚で、糠(ぬか)漬・こうじ漬・焙り干し・飯寿しをドッサリ漬け込み、冬期間の主な副食でした(田代農協婦人部『田代の行事食』, 1994, p.64)」

当時の人々にとって保存食が、冬季期間の貴重な食料となっていたことが伺えます。

「田代の行事食」には多様な伝統食が記されている

冷蔵庫が全国に普及したのは、およそ60年前。そのほか保存技術や流通の発達、生鮮食品の生産方法の変化によって、食材は次第に「買わずして手に入るもの」から「買うもの」へ。パック入りの山菜や簡単酢など簡単に手に入る商品が登場し、手間暇をかけて作られていた保存食のニーズも満たされつつあります。

時代の変化は、味の変化にも。例えば砂糖多めで作っていた「すしまま(=すし飯)」は、甘すぎるため砂糖を半量ほどに。冷蔵庫がなかった時代は保存が効くように砂糖をたっぷり入れ、1週間以上かけて食べ切ったそう。実際に食べる人が美味しく食べられるように、レシピも変化しているようです。

一方で、インターネットの情報ではまかないきれない土地の知恵もあります。例えば、塩麹。インターネットのレシピが「塩+麹」なのに対し、田代の塩麹は「塩+麹+ザラメ」。同じ品目でも、地域によって材料が違えば作り方も変わってきます。

今回の講座で行った「ゼンマイのほとびらかし」や「ワラビの塩出し」も、あるもんで流の作り方を伝授したところ「いつも上手くできなかった…」と参加者から感謝されたそう。

あるものを綺麗に美味しく食べる食の知恵が、料理教室を通じて次の世代に伝わる時間となりました。

作るもの、作るひと、食べるひと。それぞれが変化してきたことで、食文化の伝承もまた変化の様相を帯びています。

家ごとに続いてきた食文化の継承は、時代を経て「上の世代から次世代へ」。誰でも学べる場を通じて、保存食の知恵を受け継ぐ方法が模索されています。

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)