先人の時代から今に至るまで、土地を耕し豊かな農産物を育んできた羽後町。その一方で、日々の「食べるもの」を得る以外の時間を活かして豊かな生活を耕している人を、UGONEWSでは「たがやすひと」と呼び、その「好き」を極める姿を紹介しています!
3人目の「たがやすひと」は、佐々木俊行さん。小学校でドラムと出会い、高校時代の短期留学をきっかけに地元で音楽を続ける道へ。現在は音響エンジニアとして働きながら、バンド活動や動画制作などプレイヤーとしても幅広く活動しています。佐々木さんを惹きつける音楽の面白さと魅力について、話を聞きました。
記事末尾にはドラム演奏の映像も。ぜひ最後までご覧ください!

「ドラムってかっこいい」友人とハマった音楽の世界
小学生時代を過ごした1990年代は、8cmCD全盛期。佐々木さんは絶えずヒットチャートを確認し、気になるアーティストのCDを買いに羽後町や湯沢市のCDショップに通う日々でした。お小遣いも限られていたため、CDから録音したカセットテープを交換して友人と聴きあっていたそう。
そんな「聴き専」だった佐々木さんが演奏に興味を持つきっかけとなったのは、小学校5年生の時に友人宅で観た一本のライブビデオでした。
「X-JAPAN、当時は『X』というバンドでしたが、そのYOSHIKIさんの演奏を見て、『ドラムってかっこいい!』って思ったんです。東京ドームで3日間行われた、『破滅に向かって』という伝説のライブでした」
中学校の入学祝いはドラムのフルセットとCDコンポ。自宅2階の和室に友人を呼んで、バンド練習にのめり込みました。「道路一本挟んだ家まで聞こえていたみたいです」と苦笑い。打面に消音パッドを貼るなど、学生なりの工夫を凝らして練習を続けました。
ドラムを演奏する佐々木さん
B‘zなど邦楽に加え、OASISやGREENDAYなど洋楽も聴くようになり音楽の幅が広がっていたこの頃。ドラム演奏ではスピード感やフレーズの珍しさ、音の大きさなど演奏テクニックを追求。技術向上のために通い始めた湯沢市の楽器店「シティミュージック」を起点に、地元ミュージシャンとの繋がりも増えていきました。
地元で音楽を続けたい 短期留学が教えてくれたこと
中学校3年生の文化祭ステージで喝采を浴び、人前で演奏する楽しさを知った佐々木さん。高校進学後もバンド活動を継続します。先輩からのオファーも多く、一時期は5バンドを掛け持ちするほど。校内に留まらず、大人と並んで秋田県南のライブイベントにも出演するようになっていきました。
高校時代の佐々木さん
高校卒業を間近に控えた高校3年生の夏。佐々木さんは、ミネソタ州立大学機構秋田校のプログラムで1カ月の短期留学に参加します。これが、それまで都内の音楽系専門学校への進学を考えていた佐々木さんの価値観をガラッと変える出来事となりました。
「向こうの人たちって自由に、まず楽しいことが大事っていう風土なんですよね。プロのミュージシャンでなくても、クラブみたいなところで演奏している人もいて。そういうリアルなアメリカ人の生活を垣間見て、別に専門学校行ってレーベルに所属して、みたいな形でなくてもいいんじゃないかと。僕の周りに音楽をやっている大人はたくさんいるから、音楽をやるなら地元でいいんじゃないか、と思ったんです」
新たな音楽の形に触れたことで、地元で音楽を続ける道に気づいた佐々木さん。音楽をやるなら東京へ、から一転して地元就職を決意しました。
この場所で、この時代だからこそできる音楽を
高校卒業後は製造業を経て、シティミュージックに就職。「演奏する」側から「楽器を売る」立場になり、メンテナンスから音響技術に至るまで一通りの専門知識を習得しました。
バンド活動も継続し、ライブ出演は大曲市や秋田市にも拡大。いつしか佐々木さんの肩書きは「プレイヤー」兼「音響」兼「録音エンジニア」に。この経歴が見出され、施設立ち上げ時から現在に至るまで約15年、羽後町文化交流施設「美里音」の音響エンジニアとして活躍しています。
羽後町文化交流施設「美里音」のイベントにて
2020年ごろから、コロナ禍のイベント自粛が重なったタイミングで新たに映像制作をスタート。SNSを通じて県内アーティストに声をかけ、30〜50代が「懐かしい」と感じる選曲でミュージックビデオを制作しています。
「その人の世界観を大切にしたい」との思いから、弾き方や格好は完全お任せ。それぞれのアーティストがリレー形式で動画を撮り、ミックスや動画編集を経てFacebook(フェイスブック)に公開しています。
音楽は自分にとって「いろんな魅力に触れるツール」と、佐々木さん。幼少期から音楽と共に進んできた人生の先で、今度は自身の演奏や映像を通して、秋田県内で活動するアーティストの魅力や音楽の楽しさを届けています。
シンプルさこそ、ドラム演奏の真髄
「Aメロ、Bメロを叩いているときが、最高に幸せです」
テクニックに夢中だった中学生の頃、椎名林檎の『丸の内サディステック』と出会い、シンプルでリズミカルなドラムの虜に。ガラッと空けた余白の合間で遊ぶメンバーの演奏に聴き入り、楽器同士の掛け合いを通じてコミュニケーションをとる。その時間が楽しい、と話します。

一方で、シンプルなドラムの中にもこだわりが。カウントは独自で到達した「円理論」をもとに、カウントを点で捉えず円の一部として捉えることでアナログ特有のグルーヴィーなリズムを再現。また、あえて「スティックを握らない」脱力した叩き方によって、ドラム本来のパワフルな音を引き出します。
今ほどスピーカーや編集機材も整っていなかった学生時代から、自分の納得できる奏法を求めて周りの大人たちの演奏を観察し、独学で曲やアーティストを研究しながら技術を磨いてきたという佐々木さん。
テクニックを追求する中で見つけた、究極にシンプルなドラム奏法。難なく弾きこなすその姿は、それまでドラムと音楽と向き合ってきた時間を物語っていました。

パソコンひとつでも気軽に曲を作れる現代。音楽を通して人と繋がる充実感や、生身の人間だからこそ突き詰められる音楽の深みは、より一層かけがえのない価値として認識されていくのかもしれません。佐々木さんの歩みから、音楽の世界の広さが見えてきます。
佐々木さんのドラム演奏はこちらから↓↓↓
………………………………………….
UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)
