【羽後で「動き」のある人に聞いた!】
ウゴキーマンvol.5 薄井あゆみさん(後編)

ウゴキーマンとは、羽後町を舞台に「動き」のある人と、地域の「キーマン」を組み合わせた造語です。羽後町で活躍されている方、住んでいる方がどんな人なのか、普段はどんなことをしているのか、どんなことを考えているのか。UGONEWSで深掘りしていくことによって、より多くの方々に、その「人」をお届けしていきます!前回に引き続き、「有限会社ゆめ企画 須藤健太郎商店」の薄井あゆみさんのインタビュー記事をお届けします。

▼前編はこちらから!

今回は、いぶりがっこ製造へのこだわり、承継後大変だったこと、地域への想いなどを聞いていきます。

昔ながらの家庭の味を追い求め。いぶりがっこ製造へのこだわり。

ー次にいぶりがっこ製造のこだわりについてお聞かせください。ゆめ企画さんは昔ながらの製法にこだわり、いぶりがっこを作っていると聞きました。

〈薄井さん(以下同じ)〉はい、いぶりがっこの作り方はかなりこだわっています。現会長がこの会社を創業したきっかけが、東京で食べたいぶりがっこの味に対して疑問を覚えたことでした。いぶりがっこの知名度がだんだん広まり、首都圏などでも食べられるようになったとのこと。その時に、昔家庭で食べたいぶりがっこと味とかけ離れていることに気づいたそうです。子どもの頃に食べたいぶりがっこの味が忘れられず、昔ながらの製法にこだわった「本物の味」を追求するため、現会長が60歳で創業しました。

ー60歳から…とても勇気ある決断ですね。具体的には、どのような製法にこだわっていますか?

弊社では、たっぷりの米ぬかと砂糖と塩のみで漬け込み100日以上寝かせるという、昔ながらの製法にこだわって製造を行っています。創業当初はうまくいかなかったりと、試行錯誤を繰り返しました。手間暇かけたこの製法だからこそ、家庭の味に近づけることができています。

ー時間や手間をかけているからこそ、美味しいいぶりがっこが出来上がっているのですね。

そうですね。製法以外で難しい点の一つとして、近年の温暖化が原因で、より管理が難しくなっていることが挙げられます。貯蔵庫の整備のために新たに設備投資がかかったりと、大変なことも多かったですね。また、弊社には影響はありませんでしたが、漬物業界全体では、近頃改正された食品衛生法の影響が大きいです。伝統の味を守り続けるためには、変わり続けるルールや環境に適応していくことも重要なポイントですね。

事業承継後の苦悩と会長への感謝。

ー薄井さんは社員から経営者になったとのことですが、会社を継いで良かったことや大変だったことを詳しく聞かせてください。

いくら経営をかじってきたといえど、会社を継いだ当初は分からないことが多くて…。経営コンサルタントにも相談し、まずは現状の理解と10年計画を立ててみることから始まりました。現状の整理にあたって、やはり会長に聞きやすいこと、聞きにくいこともありましたが、会長はすごく理解があって。分からないことは、私から積極的にアドバイスを仰いでいましたが、いつも親身になって応えてくれましたし、言いたいことは正直に言ってくれたので、会話しながらうまく進めることができたと思います。

一方で、私が会社を良くするために、「こうしたい」と伝えると、これまでのやり方を否定されたと思われて、意見がぶつかることもありました。私としては、根本にリスペクトの気持ちがあった上で、「もっと良くするには…」という前向きな気持ちで意見を言っていたのですが…。うまく伝わらないことも多くて。

ー後継者と先代との間のミスコミュニケーションはよくあることで、会社を継ぐのは一筋縄ではないと、私も耳にします。そういった中で、薄井さんが意識していたことはありますか?

以前も今も変わらず意識していることとして、主に2つあります。

1つ目は、日々のコミュニケーションを怠らないこと。簡単なようですが本当に難しく、大切なことです。意思決定の際は、会長が残してくれた「意思」と、私や社員が叶えたい「意志」をすべて合わせることを意識しています。言いづらいことほどちゃんと言う。そうすると、本気度が伝わり、相手も歩み寄ってくれて、同じ方向を向いて仕事を進めていくことができると思います。

2つ目は、記録に残すこと。これも簡単なようですが、怠ると後で「言った」「言ってない」の話になり、お互いにとって良くありません。なんでも記録を取ろうとすると嫌がられることもありますが、大事な話はうやむやにせず、共通の認識として残しておく。時には正式な文書で残す。後で何かあったときに振り返ることができるのは、目の前のことを気持ちよく進めていく上でとても重要です。

今後の展望。地域に対する思いとは。

ー今後会社で進めていきたいこと、こうなればいいなと思うことはありますか?

職場の活性化のために、若いスタッフが入ると良いな、と思います。若い方々にゆめ企画を知ってもらえると良いなと、という思いで、最近はInstagramでの発信に力を入れていますね。また、職場環境の整備も進めています。例えば、生活スタイルに合わせて働く時間をフレキシブルにするなど、社員がイキイキと働ける環境づくりを目指しています。

ー素晴らしい取り組みですね。最後に、薄井さんが「こうなったらいいな」と思うこの地域の未来について教えてください!

どこの地域もそうですが、少子高齢化が進み、地域住民の平均年齢は上がっています。若手が前に出たり、発言したりするのは難しい状況かもしれませんが、大人も子どもも含めみんなで地域の未来について考える、そんな場があるといいなと思います。地域全体で、若い人がチャレンジできる環境づくりを進めていくことができると、地域の将来につながるかと。私もこの会社を通して、地域の次の世代に貢献することを、今後も意識して取り組んでいきたいと思います。

以上、薄井さんへのインタビュー記事後編でした。会長から、会社と意思を継いだ薄井さんの一言一言には思いが感じられ、私自身とても勉強になりました。

次回のウゴキーマンは、日本画の若手作家を奨励する「京都 日本画新展2024」で見事、奨励賞・京都府知事賞を受賞された高山紀久恵さんをご紹介します。お楽しみに!

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)