【取材レポート|12月15日開催】”茅葺き”と向き合う「茅葺き屋根の下で古民家トーク会」

格山に続き、西の家で古民家活用を語る

12月15日(金)夜19時から、仙北市角館の茅葺き宿「西の家」にて「茅葺き屋根の下で古民家トーク会」が開催されました。主催は、羽後町の西馬音内地区にあるyado&kissa UGOHUBのオーナー、村岡悠司さん。ここ羽後町は多くの茅葺き家屋を擁し農家民宿や地域の居場所としての利活用が進む一方で、茅葺き家屋や茅葺き職人の減少といった課題にも直面しています。

そうした現状に対し茅葺き民家や古民家を守りたいという意思を持った人々がつどい語りあえる場所として、今年10月に羽後町の田代地区にある茅葺きの農家民宿「格山(かくざん)」で古民家トーク会が開催されました。今回はその続編で県内各地から10名以上が集まり、茅葺き家屋や古民家活用について意見を交わしました。

仙北市角館の農家民宿「西の家」

まずは自己紹介から。今回のイベントへの参加理由は多種多様。茅葺き職人、茅葺き民家で働いている人、所持している空き家の活用方法を模索している人などバックグラウンドもさまざまです。「秋田をもっと盛り上げたい」「茅葺き民家が消えてほしくない」「秋田の良いところが伝わりきってない」と各々の思いを語ります。

茅葺き屋根には高額な維持費がかかること、また人が住まない、手入れが行き届かないなどの理由で状態が悪化しやむなく解体する茅葺き家屋も後をたたない状況に、「もったいない」と惜しむ声も。一人一人の自己紹介が終わるとフリートークの時間。鍋やお菓子をつつきながら、関心のあるテーマについて自由に話します。

あたたかいきりたんぽ鍋でほっと一息

差し入れには秋田県美郷町の「もなっきぃ」も

イベント後半の目玉は、茅葺き職人の井阪(いさか)さんによる茅葺き家屋の解説講座。プロジェクターで写真を投影しながら、茅葺き屋根の基礎知識を説明していきます。井阪さん自身も茅葺き家屋に住んでいることから、生活の中で感じる茅葺き家屋の魅力にも言及。特に茅葺きは一つひとつ人の手が添えられているため、茅葺き屋根には作り手の気持ちがこもっており、「上から見守られているような温かみがある」と井阪さんは話します。

茅葺き職人の井阪さん

《井阪さんによる茅葺き講座(抜粋)》

・茅葺きの「茅(かや)」は、屋根にふく植物のことを指す。ススキやヨシなどが代表的。
・茅葺きに適した茅の条件 =「乾燥・コシ(刈るときの押し返し)・長さ(2〜3mになるものも)」。
・地域によって茅葺きの際の材料や茅葺き民家の様式が異なる。
・茅葺き家屋は断熱性が高く、夏は涼しく冬は暖かい。
・囲炉裏で火を焚くと、その煙で屋根の茅がいぶされ防虫効果を発揮。
・茅の下には木枠が交差式に張り巡らされており、梁と共に茅葺き屋根の重量を柱に分散させて家を保っている。
・秋田県近郊では、秋に刈り取った茅を雪囲いとして利用。春先には乾風によって乾かされ、茅葺きに最適な材質になる。
・使えなくなった茅や残りかすは堆肥に利用される。
・茅葺きは一度にすべてを葺くのではなく、年毎に一部の箇所を拭き直すのが一般的。
・茅の上に花を植える「芝棟」は、棟に芝生が根を張ることで風雨に耐える効果をもつ。
・建築基準法の定めにより、人が住むための茅葺き家屋を新築で建てることはできない

終始なごやかな雰囲気に包まれた夕食時間。名残惜しさもありつつ、1時間の延長をへて解散。宿泊するメンバーは西の家に残り、翌日は囲炉裏を囲んで朝ごはんをいただいてから、角館近辺の古民家巡りに旅立っていきました。

朝ごはんには「ぱんたんぽ(きりたんぽを模したパン)」と御膳をいただく

羽後町と繋がる茅葺きの風土

今回の会場となった「西の家」は明治時代に建てられた築130年超の茅葺き民家で、この10年間は農家民宿として運営されています。現オーナーの東風平(こちひら)さんは大学進学をきっかけに秋田へ移住。仙北市の地域おこし協力隊として市内の農家民宿に関わる活動を行ったのち、2022年に「西の家」を事業継承しました。

その際、茅葺き屋根の再生を学ぶにあたって羽後町を訪れ、格山や旧長谷山邸など町内の茅葺き民家を訪問したそう。特に、茅葺き民家を農家民宿として再生するために一から民家の茅をふきなおす小林さん*の姿に勇気をもらったと話します。

*小林さんのUGONEWS特集記事はこちら

西の家オーナーの東風平さん

現在は西の家で、滞在と体験のプログラムを提供している東風平さん。来訪客に合わせてプログラムの内容を変えつつも、仙北市のディープな魅力は、住むように滞在してこそ感じられると語ります。今年からは、冬の秋田を体験してほしいと冬季期間の営業も開始しました。地元の人が住んでいた古民家に滞在し、その地ならではの体験をする。過去から大切に受け継いできた茅葺き民家だからこそ提供できる価値を活かし、国内外からのお客さんに土地の魅力を伝えています。

【問い合わせ】
UGO HUB
TEL|090-7428-8697(村岡)
メール|ugohubshare@gmail.com

西の家
仙北市角館町小勝田下村34
TEL|080-7847-6086
(告知)1月13日〜3月3日 TAZAWAKO WINTER BASE 開催!詳細はこちら

――――――――――――――――――

記者:UGONEWS編集部(新人地域おこし協力隊|岸峰祐)