【羽後で「動き」のある人に聞いた!】
ウゴキーマンvol.7
藤原洋介さん(後編)

ウゴキーマンとは、羽後町を舞台に「動き」のある人と、地域の「キーマン」を組み合わせた造語です。羽後町で活躍されている方、住んでいる方がどんな人なのか、普段はどんなことをしているのか、どんなことを考えているのか。UGONEWSで深掘りしていくことによって、より多くの方々に、その「人」をお届けします!

前回に引き続き、「株式会社そば研」の藤原洋介さんのインタビュー記事をお届けします。

▼前編はこちら!

そば研に入社〜会社を継ぐまで。

ー藤原さんご自身のことについて教えてください。藤原さんはなぜ農業をすることになったのでしょうか?

〈藤原さん(以下同じ)〉私は羽後町の農家出身で、長男として育ちました。幼い頃から、「いずれは自分も農業を継ぐんだろうな」と、漠然と思っていて。羽後高校を卒業した後は、秋田県立短期大学に進み、園芸学を専攻し2年間学びました。その後通称「フロンティア研修」と呼ばれる県主催の後継者育成研修に2年間参加し、秋田県の農業試験場で経験を積むことになります。平成16年(2004年)に就農するため羽後町に戻り、実家でキュウリを栽培しながら、父とその仲間5人が立ち上げた、農業法人「有限会社馬音農場」で、社員として働き始めました。余談ですが、若い頃は無人ヘリの操縦が得意で、大会に参加して何度も賞をいただいていました。(笑)

ー無人ヘリ…すごいですね!幼い頃から農業一筋で経験を積まれてきたのですね。そこからどうしてそばの道に進むことになったのでしょうか?

馬音農場では、水稲育苗や無地ヘリ防除の他、羽後町そば栽培研究会からそばの播種や収穫を作業受託しており、その際の機械のオペレーターとして、そばに関わるようになります。

そのころ、そばの収穫などで関わりのあった「羽後町そば栽培研究会」が「株式会社そば研」となり、そちらに出向で1年間従事することになります。当時、社員は現会長と私のほか1人しか所属していない状況でしたが、福利厚生や環境整備を整えて、少しずつ体制を立て直していきました。その後、出向ではなく正社員としてそば研に所属することになり、10年ほど代表を務めた現会長から事業を承継して、私が代表を引き継ぐことになりました。

ー株式会社立ち上げ期に深く関わっていたからこそ今があるということですね。代表を引き継いでからも変わらない考えはあるのでしょうか。

前身のそば栽培研究会の頃から「農地を農地として次世代に引き継ぐ」というスローガンを掲げてきました。これが会社の理念であり、会長から受け継いだ想いです。これからも未来の農地を守る仕組みづくりに取り組んでいきたいと思っています。一方で現代は変化のスピードが早く、10年前とは状況が大きく変わっていますので、理念に沿いながらも変化に柔軟に対応していかなければなりません。

20年前の田園風景を復活させたい。

ー最後に、地域の未来に対する藤原さんの思いを教えてください。

今、世の中では一極集中が進んでいると言われていますが、その流れに逆らって、分散していこうという動きも見られます。先ほど言ったように変化が複雑で早い。これまでは「他人事だ」と感じていましたが、地域の一員として「自分がやらねばならない」と強く思うようになってきました。親や会長から受け継いだこの産業を次世代に繋いだとき彼らがどう思うか。彼らが「残されても困る」と思うようなことがあってはいけません。

今の子どもたちが成人した時に、「この産業は魅力的だ」と思ってもらえるような体制を作り上げることが目標です。魅力や誇りを感じられる産業にするための1つとして、除草剤や殺虫剤の使い過ぎで自然界から減ってしまった虫たちを取り戻し、20年前の自然環境を復活させたいと考えています。

ーとても興味深いですね。どうして昔の自然を取り戻そうと考えているのですか?

ただ単に新しいものを作り続けるのではなく、地域に根ざした形で取り組むことが最善だと思うからです。そして、当時の田園風景を再び取り戻したい。県では生態系の調査も進めていますが、イナゴはその良い例です。昔はそばの収穫袋にコンバインでそばと一緒に捕獲されてしまった、イナゴがたくさん入ることがありましたが、今では一匹も見つけることができないことも珍しくありません。

羽後町は非常に大きなポテンシャルを秘めている町です。しかし、農家の担い手不足が進んでおり、その結果、地域がうまく回らなくなっています。農業をやめてしまう人が増えている現状を変えたい。私たちはそば農家ですので、いずれは一面にそば畑が広がっているような光景を実現したいですね。

そばの収穫に同行しました!

後日、そばの収穫風景を見学させてもらうことに。7月の晴れたある日、羽後町大戸地区にあるそば畑に伺いました。そこには、一面がそばの花に覆われたそば畑が広がります。白と緑の圧巻のコラボレーションに、しばらく見入ってしまいました。

収穫はそば用のコンバイン*を使います。ちょうどこの日使用していたコンバインは、今年新しく購入したものとのこと。スピーディーにそばを刈り取り、自動で脱穀まで行います。ピカピカの機械が勇ましく刈り取っていく姿に、思わず「かっこいい〜!」と声が漏れてしまいました。

*収穫・脱穀・選別用の農業機械(写真の赤い機械)

収穫を担当していた渡部さん曰く、近年の市場では緑がかったそば粉が求められるとのこと。収穫する時期が遅くなると黒ずんでいってしまい、求める色のそば粉にならないと言います。そばの収穫適期は、4月下旬の種まきからの積算温度が1,400度程度になる頃とのこと。例年は平均75日程度かかるところ、温暖化の影響で近年は65日程度で1,400度近くに達してしまうそうです。収穫時期も前例通りとはいかなくなっています。

常に自然と対話しながらより良いものを提供しようとする姿に、職人の勇ましさを感じました。今度は乾燥〜製粉の様子も追ってみたいと思います!

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)