【羽後町の利雪運動】30年続く雪中貯蔵酒、今年も初蔵出し

2024年5月28日(月)の朝。UGONEWS編集部が訪れたのは、羽後町田代地区の菅原酒店横にそびえ立つ巨大なドーム型の何か。シルバーシートの隙間からわずかに覗くのは…、もしや「雪」!?

民家の立ち並ぶ道路を一歩入ると現れる、これは一体…。

巨大な雪室に、1300本超の日本酒を貯蔵

実はこれ、「雪中貯蔵酒(せっちゅうちょぞうしゅ)」を保管するための雪室(ゆきむろ)。大きさは縦4.2メートル、横12メートルほど。例年は5〜6メートルの高さまで雪を積むそうですが、今年は積雪量の減少とドームの安定性を考慮して幅広型の雪室を設置。この日は気温20度を超える天気の中、今年初の蔵出しが行われました。

新しく設置した通路に続く扉を、ゆっくりと開きます

また今年からは入口部分に通路を設置。今までは貯蔵庫に入るために雪を切り崩さなければならず、蔵出しも一苦労だったそう。新たに設置した通路は高さ2メートル・幅90センチメートル・奥行き3メートルのコンクリート製で、扉は二重の断熱構造。経費やタイミングを考慮し、30周年の今年を契機に改良工事に踏み切りました。

オレンジの扉を開くと、その奥にはもう一つ断熱材の扉が

ひんやりとした雪中貯蔵庫に入り、暗闇をライトで照らすと、見えてきたのはズラリと並んだ一升瓶ケース。長年保管している古酒に加え、今年は2月〜3月にかけて新酒1000本と生酒30本を格納。温度0度、湿度100%の密室で保存されています。この雪室で8月頃まで保管と出荷を行い、常温が適温になる秋〜冬季は半地下の倉庫で保管するそう。

室内はひんやり冷たく、湿度の高さにカメラのレンズも曇ってしまうほど

手探りで始めた雪中貯蔵、今年で30周年

こちらの雪中貯蔵酒を製造販売する菅原酒店の店主、菅原弘助(すがわら・ひろすけ)さんが日本酒の雪中貯蔵を始めたのは1995年のこと。豪雪地帯ならではの地域性を活かし、「雪を利用していきたい」との思いで利雪運動(りせつうんどう)に取り組んでいた弘助さん。着目したのが、雪の中に食物などを埋め、安定した環境での熟成を実現する「雪中貯蔵」でした。

雪中貯蔵酒の一升瓶ケースを運び出す菅原弘助さん

酒店を営む傍ら、雪中貯蔵酒づくりに乗り出した弘助さん。手探りの状態で始めた雪中貯蔵も次第にファンを獲得し、今年で30周年を迎えました。この日の蔵出し本数は約150本で、今後は注文に応じて出荷。他にもイベント出店などを通じて、県内外に雪中貯蔵酒を届けていきます。

「綺麗な雪を思い出して飲んでもらえたら。古酒は、”何年前にはこんなことがあったな”など、ご自身の思い出と共に日本酒の良さを改めて味わっていただきたい」と菅原さん。

雪中貯蔵酒は、電話・ファックス・メールのいずれかで注文可能とのこと。羽後町田代地区にある菅原酒店での現地購入も受けつけています。なかなか見ることのできれない「真夏の雪」を見に、雪室にも足を運んでみてはいかがでしょうか。

【お問い合わせ】
菅原酒店
〒012-1241 秋田県雄勝郡羽後町田代梺63-1
TEL:0183-67-2111

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)