【西馬音内盆踊り特集2024-④】
真夏の夜の羽後町に響きわたるお囃子の生演奏

西馬音内盆踊りまであと2日に迫った羽後町。今年の本番は8/16(金)、8/17(土)、8/18(日)の3日間で行われます。UGONEWSでは【西馬音内盆踊り特集2024】として、「これを知っていれば西馬音内盆踊りを何倍も楽しめる!」という記事を本番まで数回にわたってお届けしています。

第4弾かつラストとなる今回は西馬音内盆踊りの「お囃子」を特集。西馬音内盆踊りで演奏される3種類の曲目、お囃子に乗せて唄われる歌詞の特徴、また当日お囃子のステージとなる櫓が立つ西馬音内盆踊り会館について取り上げます。

優美な盆踊りを盛り立てるお囃子

「囃子(はやし)」とは日本音楽の用語の一つ。西馬音内盆踊りの曲は「お囃子」、奏者は「囃子方(はやしかた)」と呼ばれます。西馬音内盆踊りのお囃子を編成する楽器には、笛、大太鼓、小太鼓、三味線、鼓、鉦(かね)などがあります。

今年5月に行われた「これが秋田だ!食と芸能大祭典2024」でのお囃子

西馬音内盆踊りのお囃子は3種類。まず「寄せ太鼓(よせだいこ)」から始まり、踊りに合わせて囃される「音頭」「がんけ」が続きます。また、音頭の途中には笛のメロディが変わる「とり音頭(とりおんど)」と呼ばれるパートがあります。

「寄せ太鼓」は最初に演奏されるお囃子で、踊りの始まりを知らせるとともに、踊り手たちに集合を促す意味合いがあるとされています。また、西馬音内盆踊りの最後にも演奏されます。以前は締めの寄せ太鼓が始まると踊り手も観客も帰り始めていたそうですが、現在は櫓の前に人が集まり手拍子を送るのが恒例となっています。

西馬音内の言葉で唄われる「地口」「甚句」

「音頭」のお囃子に合わせて唄われる歌詞は「地口(じぐち)」と呼ばれ、調子は889・889の六句で構成されています。「ヤートーセー ヨイワナ セッチャ」という軽やかな掛け声から始まる地口。メロディーがなく、読み上げるように唄われるのが特徴です。

一方、「がんけ」のお囃子にあわせて唄われる歌詞が「甚句(じんく)」。甚句は7775の四句で構成されており、メロディーがあるのが特徴です。

今年9月16日(月)まで歴史民俗資料館で開催中の特別展「西馬音内盆踊り展」ではレコードの展示も

西馬音内盆踊りのうたの特徴の一つが、それぞれの歌詞に使われている言葉。現在唄われている歌詞の多くが昭和初期に地域の商店などで懸賞募集されたもので、当時の西馬音内の言葉で唄われています。そのため地域の言葉がわからない観客からすると、歌詞を聴いても意味が分からずポカンとしてしまうこともあるそう。

西馬音内盆踊りの歌詞について、西馬音内生まれで元 秋田県立大学教授の黒澤辰一(くろさわ しんいち)氏はこのように語っています。

「羽後町地方には、とても面白い方言がたくさんある。その方言で作られた地口を、方言をちゃんとしゃべる人が唄うので地口は愉しいのである。西馬音内盆踊りの地口はこの地方の方言なくしては語り得ない。」(黒澤辰一「時勢はどうでも盆踊り ー地口についての雑感」『西馬音内盆踊り公式ガイドブック2011』, 観光物産協会, 2011, p.15)

羽後町ならではの言葉で唄われる「地口」と「甚句」。この土地で生まれ脈々と受け継がれてきた言葉たちが、西馬音内盆踊りを通して今日の私たちに届けられています。

お囃子と「西馬音内盆踊り会館」

西馬音内盆踊りのお囃子は、盆踊りの期間限定で建てられる櫓(やぐら)の上で行われます。もともとは本町通りに櫓を建てていたそう。西馬音内盆踊り会館のオープン以降は、会館前に設置される櫓の2階にて演奏を行っています。

西馬音内盆踊り会館が開館したのは今から約20年前の平成17(2005)年。設立の背景には、盆踊りの櫓の老朽化などもあったといいます。現在は踊り衣裳をはじめ西馬音内盆踊りにまつわる展示を常設する施設として、また毎月第2土曜日の西馬音内盆踊り定期公演や各種催しを行う会場としても利用されています。

◯盆踊り期間中の開館情報
【開館時間】9:00〜盆踊り終了時間まで
【場所】秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町108-1(地図
【概要】館内には、100年を超える歴史を持つ古い踊り衣装のほか、盆踊りの様子を人形で再現したものや、藍染めの大きな壁掛け、キルトのタペストリーなど、120人を超す地元の女性たちによる手作り作品が展示されています。踊りの練習などにも使われる体験交流ホールでは、200インチの大型スクリーンで盆踊りの映像資料を鑑賞できます。(羽後町ホームページより引用)

盆踊り本番まで1週間に迫った週末、会館前に櫓が建てられました

西馬音内盆踊り本番を前に4回にわたってお届けしたUGONEWS(ウゴニュー)の【西馬音内盆踊り特集2024】、いかがだったでしょうか?今回の記事が、西馬音内盆踊りをより深く知って楽んでいただくきっかけとなれば幸いです。公式ガイドブックや書籍なども多く発行されている西馬音内盆踊り。気になった方はぜひそちらもご覧ください!

西馬音内盆踊りの本番レポートも後日公開予定です。UGONEWSの各種SNS(Instagram、Facebook)でも発信していく予定ですので、引き続きチェックをよろしくお願いいたします!

参考文献:
西馬音内盆踊り公式ガイドブック2006(2006)観光物産協会
西馬音内盆踊り公式ガイドブック2011(2011)観光物産協会
西馬音内盆踊り公式ガイドブック2014(2014)観光物産協会
西馬音内盆踊りリーフレット. 観光物産協会(リンク

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)