羽後町に秘められた歴史や文化を一から学び、特集記事で紐解く「羽後の歴史」もとい「UGO㊙︎STORY(ウゴヒストリー)」。今回のテーマは、2025年10月4日(土)をもって移設開館20周年を迎えた「町立図書館」です!
この20年間でどんな歴史が紡がれてきたのか。そもそも20年前に移設されるまでは、どこにあったのか…。現・図書館長である佐藤芳一さんをはじめ図書館職員のみなさんのお話と史料から、町立図書館の歴史を紐解きます!
67年前、羽後町に初めて図書館ができた日
羽後町の町制施行70周年となった今年。羽後町は西馬音内町・三輪村・新成村・明治村・元西馬音内村・田代村・仙道村の一町六村が合併して、1955(昭和30)年に誕生しました。今年11月には活性化センターで「町制施行70周年記念式典」が行われたほか、年間を通して70周年を記念した様々な催しが行われました。

では、図書館の歴史はどうでしょうか?分厚い郷土史を引いてみると、羽後町立図書館の開設は1958(昭和33)年4月1日。羽後町の町政施行から3年後のことでした。
それまでは各公民館に図書部が設置されていたそう。羽後町ができるにあたり、そのうち西馬音内公民館の蔵書300冊ほどを引き継ぐ形で、町立図書館は発足しました(羽後町郷土史編纂委員会『羽後町郷土史』, 1966, p.797)。
図書館の入る西馬音内公民館は、二万石橋近くにあったそう。前・図書館長である沼澤氏の著書に書かれた幼少期の記憶から、当時の図書館の様子を窺い知ることができます。
「玄関に板敷が置かれ、そこで靴を脱ぐ。ガラガラと戸を開けて入った部屋は、家や近くの店とは全然違う、古びた紙の重なった匂いがふと鼻についた。窓際に薪が積まれていたような記憶がある」(沼澤晴夫『愉快、図書館で迷子になる』, 2024, p.5)
広報うご1963年11月号の誌面には図書館の取り組みとして、当時「読書普及週間」と称して書道・日本画・洋画展など様々な催しが開かれた、と記されています(秋田県雄勝郡羽後町『縮刷版 広報うご』, 1977, p.203)。
念願となる羽後町中央公民館の開館、そして図書館移転
町立図書館が次の場所に移ったのは、発足11年後となる1969(昭和44)年。当時上川原にあった羽後町役場の西側に新しく羽後町中央公民館が建てられ、その1階に図書館が入りました。建物は鉄筋コンクリート(一部鉄骨)2階建てで、隣接する役場とは廊下で繋がっていました。1988(昭和63)年の役場移転後も、公民館の建物は残り、引き続き1階部分が図書館として利用されました。
2000(平成12)年当時の図書館(佐藤信淵150回忌記念事業資料、飯塚写真店撮影/歴史民俗資料館所蔵)
開館当初の蔵書数は2,789冊で、それから8年後の1966(昭和41)年には6,200冊まで増加(羽後町郷土史編纂委員会『羽後町郷土史』, 1966, p.797)。現在の蔵書数は80,000冊超といいますから、この70年弱でその規模を大きく拡大させていったことがわかります。

広報うご2005年8月号掲載の地図。地図左下の歴史民俗資料館向かいに「図書館」の記述がある
2005年に移転オープン。町民に愛される図書館を目指して
現在の町立図書館は上川原にあった図書館からの移設に伴い、西馬音内盆踊り会館に併設される形で2005年(平成17)年10月にオープンしました。子どもたちが靴を脱いで上がれる「児童コーナー」の新設や、コンピューター学習コーナーの導入をはじめとした図書館の電子化推進など、移設開館に伴ってハード面の整備も進められました。
広報うご2005年11月号(p.2〜3)に掲載された移転オープンの記事
また図書館が移設開館した2005年は、ちょうど羽後町の町政施行50周年のタイミング。周年事業として地域史の編纂が行われた時期で、町立図書館の郷土史の蔵書もこのタイミングで増加したといいます。
2010(平成22)年頃からは読書推進事業として「小さな朗読コンサート」や「絵本ライブ」など、図書館主催の館外イベントが活発に行われるようになりました。
昨年に図書館で行われた「絵本ライブ」の様子
その後、イベントによる体験と読書の機会を結びつけようと、図書館を会場としたイベントが企画されるようになりました。これから町を担っていく世代に「図書館は楽しい場所」と思ってもらえるよう子ども向けイベントを中心に開催し、多くの親子連れが図書館を訪れるきっかけとなりました。
「次はいつやるの?」といった子どもたちの期待の声を受けて、シーズンごとだった開催頻度もいつしか毎月開催に。ハロウィンやクリスマスなどシーズン要素も取り入れながら、独自イベントを実施しています。
▼一昨年の12月に行われた図書館クリスマスイベント(UGONEWS記事)
こうしてさまざまな取り組みを重ねてきた図書館も、2020(令和2)年に始まったコロナ禍により1ヶ月弱の臨時休館を余儀なくされます。しかし、ここで挫けないのが羽後町の図書館。「この機会にリニューアルして、より使いやすい図書館にしよう」と、休館期間を活用して図書館の改良に取り組みました。現在の書架配置や館内サインも、この時に作られたもの。
新たなアイデアは各地の図書館の取り組みを参考にしたり、民間事業者の仕組みから学んだり。2024(令和6)年のバザール西馬音内店の閉店で利用者がガクンと減ったほか、クマ出没やインフルエンザの流行など、時代の影響は避けて通れません。「どうしたら不安や不満のない形で、図書館に来てもらえるか」と、常に模索を続けています。

羽後町ツキノワグマ対策会議の決定を受け、今年の11月末から入口の自動ドアは手動対応に
移転開館20周年。楽しいイベントで日頃の感謝を伝える
今年は図書館移設開館20周年を記念して、多彩なイベントが実施されました。
今年10月には謎解きイベント「パンプキン・キングからの挑戦状」、絵本ライブ「THE 子ども寄席」、仮装イベント「ハロウィンパーティー」を開催。他にも10月限定で20周年記念デザインの図書利用カードが発行され、普段10冊までの貸出冊数は20冊に大増量。20周年記念ロゴの入った特製しおりのプレゼントも!
20周年の節目に際し、普段から図書館を利用してくれている方へ感謝を伝えるとともに、新たに図書館を知ってもらい利用してもらうきっかけにもできたらと、盛りだくさんの内容で行われました。
今年10月、絵本ライブ「THE 子ども寄席」内で行われた落語教室
「まず図書館に来て、面白い場所だな、楽しいなと思ってもらえたら」と、現・図書館長の佐藤さん。図書館員の荒井さんは「強制されて読むのではなく、自分の意思で本を手にとって読むことで、読書への肯定感をつけていってほしい」と話します。
定期的な取り組みとして月刊紙や図書館ブログを通じた情報発信、旬のテーマに合わせて本を揃えた企画展示も実施。現在、羽後町の人口12,777人(2025年11月30日現在)に対して町立図書館の貸出登録者はおよそ3,600人。「まだ図書館の存在自体を知らない人もいるので、まずは存在を知ってもらいたい」と、期待感も滲ませます。
年末の図書館には、新年に向けたデコレーションも
町立図書館の設立から67年、現在の図書館が開館してから20年。たくさんのストーリーが紡がれてきたその裏側には、図書館に関わってきた多くの人の熱い思いと、よりよい町民体験を追求し続ける中で積み重ねられた絶え間ない努力がありました。
2026年も、年初めは町立図書館で!
さて、2025年も残すところあと数日となりました!2026(令和8)年の年明け、町立図書館は1月4日(日)9:00より開館予定。新年ならではの豪華な催しが行われます。詳細は下のポスターから↓

前・図書館長の沼澤さん曰く、「圧倒的な量の読んでいない本に囲まれ」て未知との出会いや深い内省ができるのも、図書館の特徴のひとつ(沼澤晴夫『愉快、図書館で迷子になる』, 2024, p.33)。
折しも来年の干支は「午(うま)」。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」のことわざにもある通り、先入観にとらわれず何事もまずは自分で経験してみることが大切。図書館をぶらぶら歩いてみる。知らない一冊を手に取ってみる。それらもまた、新たな一年を彩る貴重な体験になるのではないでしょうか。
2026年も、面白いことがたくさん起こりそうな羽後町立図書館。ぜひ一度、いや、二度三度と足を運んでみてはいかがでしょうか!
【羽後町立図書館】
開館時間 平日9:00〜19:00/土日祝9:00〜17:00
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合、その翌日)、8/16〜18(盆踊り期間)、12/29〜1/3(年末年始)
住所 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内裏町108-1
TEL 0183-62-2205
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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)
