ウゴキーマンとは、羽後町を舞台に「動き」のある人と、地域の「キーマン」を組み合わせた造語です。羽後町で活躍されている方、住んでいる方がどんな人なのか、普段はどんなことをしているのか、どんなことを考えているのか。UGONEWSで深掘りしていくことによって、より多くの方々に、その「人」をお届けしていきます!
創業114年目!老舗和菓子屋のフレッシュな職人
西馬音内地区橋場、二万石橋すぐ近くに佇む、いかにも歴史を感じる和菓子屋「菓子司 万寿堂(かしつかさ まんじゅどう)」。「橋場まんじゅう」や「西馬音内まんじゅう」が人気のこちらのお店。みなさんもお馴染みのお店ではないでしょうか?今回は万寿堂の5代目矢野圭伍さんと、圭伍さんの妻矢野萌加さんにインタビューしました。
お二人は約1年前に羽後町に移住(圭伍さんはUターン)し、万寿堂の社員として働いています。とても仲睦まじいZ世代のお二人に、お店のことや移住した経緯、将来のことなど、いろいろ聞いてみました!羽後町に住む若者としての熱い気持ちも…。ぜひ最後までご覧ください!
【氏名】矢野 圭伍(やの けいご)/矢野 萌加(やの もえか)
【職業】菓子司 万寿堂 社員(後継ぎ)
【出身】圭伍さん:羽後町西馬音内地区/萌加さん:茨城県結城市
【趣味】共通:サブスクリプションで動画鑑賞(最近のブームはアニメの「金田一少年の事件簿」と「ブラックジャック」)/圭伍さん:ドライブ、バイク/萌加さん:コスメ
伝統の味を守り続けながら新たなチャレンジもしていく
ーはじめに万寿堂さんことを教えてもらえればと思います。万寿堂さんはいつ創業されたのですか?
〈圭伍さん〉創業が明治44年で、今年で114年目になります。父が4代目で私が5代目です。
ー114年!すごい!とても長い間、町内外のファンに愛されていますね。
〈圭伍さん〉そうですね。基本メニューが10〜15種類、季節メニューが3種類くらいの全15〜20種類あり、様々なお客様に支えられています。定番メニューは、甘さ控えめの元祖「橋場まんじゅう」、黒砂糖を使った薄皮の「西馬音内まんじゅう」です。橋場まんじゅうは創業当初からありますが、西馬音内まんじゅうは祖父と父の代から売り出したものです。祖父が開発した「マドレーヌ」も、和菓子屋が作る洋菓子として人気が高いですね。
ー店頭に様々なお菓子が置いてありますが、本当にどれも美味しそうですよね。たくさんのファンがいる万寿堂さんですが、製造へのこだわりはありますか?
〈圭伍さん〉悪い意味で「味が変わったね」と言われないように、配合などを日々気をつけています。この味が好きで、毎日のように買いにきてくれるお客様もいますし、そういったファンの方々を大事にしていきたいな、と。私の代で味が変わらないように、伝統のあるこの味を受け継いでいくことが大切だと思っています。
ー先代から想いが受け継がれてきて、今でも伝統の味を楽しめているのですね。とても感慨深いです。逆に新たに始めていることや力を入れていることはありますか?
〈圭伍さん〉新規のお客様に来てもらえるように様々な工夫をしています。例えば、修行先で学んだ「上生菓子(じょうなまがし)」の製造販売を新たに始めました。基本的には私と妻の2人で、写真映えするカラフルなお菓子を作っています。月毎にテーマを変えていて、以前は「動物」をテーマに、可愛らしい動物たちのお菓子作りました。町外の人への手土産として人気の商品です。
〈萌加さん〉Instagramを中心とするSNSでの発信も頑張っています。主に私が担当していて、町外の若い人たちへも訴求できるようにと始めました。実際に「インスタを見てきました!」という人もいたので、今後より一層力を入れていきたいな、と思っています。
和菓子の道に進んだ経緯/羽後町に来てみて
ー次に圭伍さん、萌加さんのことを聞いていきたいと思います。お二人のこれまでについて簡単に教えてください!
〈圭伍さん〉西馬音内地区出身の1999年生まれ、24歳です。とてもやんちゃな子供だったのですが、小学校3年生で野球を始めて以来、高校までずっと野球一筋で頑張ってきました。羽後中学校3年生の時に、県大会で優勝することができて…。高校でも高いレベルで野球を続けたいと思い、実際に練習を見て「一番甲子園出場に近いのでは」と思った明桜高校に進学しました。3年生の夏の大会では、当時2年生エースだった吉田輝星選手のいる金足農業高校を破って甲子園に出場することもできました。練習や寮生活はとても大変でしたが、良い経験ができたなと思います。
ー甲子園出場はすごいですね!たしかに圭伍さんといえば「野球」というイメージの方も多いのではと。そこからどのような経緯で和菓子の道に進んだのでしょうか?
〈圭伍さん〉心の中では家業を継ぐ前提で過ごしてきていて、野球を引退した時に「じゃあどうしようか」と。そこで父に、祖父が通っていた2年制の専門学校である「東京製菓学校」に行くのがいいのではと言われたんです。私の思いとしても、お菓子の専門的な学びを得たかったので、東京製菓学校に進学し2年間和菓子のことを勉強しました。専門学校卒業後、浦和にある「菓匠 花見(かしょう はなみ)」で3年間和菓子作りの修行をしました。修行先での3年間は厳しい環境でしたが、濃い時間を過ごすことができたなと思っています。
〈萌加さん〉私は茨城出身なのですが、たまたま夫と同じ職場で働いていました。年齢は夫の1個下で、当時はよく夫と一緒に東京に遊びに行ったりなどしていましたね(笑)。夫が家業を継ぐということで入籍し、私も夫についていく決心をしました。
ーお二人がとても仲が良さそうなのが話していて伝わってきます!一点質問があって…。家業がある家系でも、地元に戻ってきて継ぐというのは勇気のある決断だと思います。なぜ3年で戻ろうと決断したのですか?
〈圭伍さん〉お菓子屋の世界では、修行先で3・5・10年経験を積んで独立するのが一般的です。3年間修行先で過ごしてきて、ようやく一人前になって来た感覚がありました。また、親からも「できれば早く戻ってきてほしい」と言われていたので、3年で戻ることを決断しました。
ーなるほど…。圭伍さんは地元、萌加さんは新しい場所で働いていることになると思います。修行先で働いていた頃との違いはどんなところでしょうか。
〈圭伍さん〉新商品の開発など、ある程度自分たちのやりたいことが形にできることはやりがいを感じます。試行錯誤しながら思いついたものを作ってみたりと、創作意欲が掻き立てられますね。
〈萌加さん〉創作意欲という意味では、商品を伝える際の見え方を気にするようになりました。例えば、花やお皿など今まであまり気にしてなかったものにも注目して選ぶようになりましたね。
〈圭伍さん〉反面、商品を作るのはとても難しいなとも感じています。地域で好まれる味はどんなものなのかと、日々研究ですね…。
ー研究熱心な姿にとてもリスペクトします。ただ萌加さんは特に、新天地ということで大変なことも多いのではないでしょうか?
〈萌加さん〉徐々に慣れて来ましたが、やはり言葉がわからないことがあります。それと、お客さん同士の関係性を知ったり、常連のお客様の名前と顔を覚えたりと…日々勉強ですね。
和菓子界のホープ2人の今後の展望や想いとは
ー万寿堂さんとしてお二人が今後力を入れていきたいことはありますか?
〈圭伍さん〉万寿堂のお菓子は添加物を使っていないため、ここに来なければ買えない商品です。そういう面では特別感がありますが、今後は自らが色々な場所に顔を出して、いろんな人に楽しんでもらうことも重要だと思っています。待っているだけではなく、自分から仕掛けるという気持ちで新しいことにチャレンジしていきたいです。
〈萌加さん〉もっと「万寿堂」という名前を世の中の人たちに知ってもらいたいな、と。「西馬音内まんじゅう」は知っているけど、「万寿堂」を知らない人もいるかと思います。「西馬音内まんじゅうを作っているお菓子屋=万寿堂」となるように、万寿堂の認知を上げていきたいです。
ー次世代の担い手として、ぜひ一緒に地域を盛り上げていきましょう。若い世代が地元を離れ戻ってこなかったり…など、課題もたくさんある地域ですからね。
〈圭伍さん〉そうですね。私は小さい頃から西馬音内盆踊りを見て育ってきたので、そういった文化は失くしたくないですね。反面、地域から何かが失くなることは人が少なくなっている今、仕方がないことだとも思います。だから大事なのは、失くなって終わりではなく「失くなったら新しく作る」という気持ちかと。
また、私も若者が地元に戻って来てほしいと思っていますが、そこに「何かがあるから」戻ってくるのだと思います。その「何か」は、地域の魅力だと思いますので、それを形にすること、言語化することは私としても頑張っていきたいです。
ー「ないなら作る」精神はとても共感しますし、見習っていきたいです!最後に、お二人が将来的に実現したいことは何か教えてください。
〈圭伍さん〉将来的には、新商品の開発、ECサイトでの販売、店舗拡大の3つができるといいなと思っています。簡単なことではないと思いますが、実現してもっと羽後町に貢献したいです。
〈萌加さん〉繰り返しになりますが、情報発信にもっと力を入れていきたいです。例えば、Tiktokで夫が製造しているところ、お菓子作りの裏側を動画して、たくさんの人に周知していきたいと思っています。情報発信を通じて、今まで万寿堂を知らなかった県外のお客様が買ってくれたらいいなと。町内外の新しいファンをたくさん作っていきたいです。
以上、矢野圭伍さん&萌加さんへのインタビューでした。若いお二人の、伝統を継承しつつもチャレンジングな姿勢に私も感化されました。これからも一緒に地域を盛り上げていきましょう!
次回のウゴキーマンは、昔ながらの製法にこだわったいぶりがっこ、「金の蔵」でお馴染み。「有限会社ゆめ企画 須藤健太郎商店」の代表取締役、薄井あゆみさんをご紹介します。お楽しみに!
………………………………………….
UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|土田大和)