ー羽後高校は秋田県の希望であるー『教育のミライを考えるシンポジウム』にて羽後高校の取組を報告

こんにちは!羽後高校魅力化プロジェクトに関わっている、慶應大学3年の大沢かおるです!羽後町には3年前の大学1年生の頃から定期的に滞在しており、たくさんの方にお世話になってきました。この度、これまでにない「高校魅力化」を成し遂げている羽後高校の実態を秋田県内の教育関係者や政治家、行政職員の方々にお伝えすべく、シンポジウムを開催致しました。この記事では当日の様子をお伝えします!

【羽後高校魅力化プロジェクトとは】

慶應義塾大学長谷部葉子研究会・羽後高校プロジェクト(通称:うごP)は、羽後高校・羽後町の行政・NPO法人みらいの学校・慶應SFC設置の長谷部葉子研究会の四者共同事業です。『羽後高校の魅力化による生徒数の増加』の実現を通して羽後高校を存続させることを目指し、2019年に活動を開始しました。詳細は記事末尾のまとめをご参照ください!

その慶應大が中心となってシンポジウムを開催

「教育のミライを考えるシンポジウム」が開催されたのは、2024年3月9日(土)。大館市教育委員会と、慶應大学湘南藤沢キャンパス(通称:SFC)のゼミである「長谷部葉子研究会」による共催イベントです。羽後高校プロジェクトメンバーである大沢香晴(おおさわ かおる)の地元、大館市にて行われました。

登壇者は慶應大学出身の猿田和三秋田県副知事をはじめとして、福原淳嗣大館市長、高橋義之教育長、日景賢悟 釈迦内サンフラワープロジェクト実行委員長、鈴木寛元文部科学副大臣。SFCからは長谷部葉子慶應大准教授と大学3年生の大沢香晴が登壇し、秋田の教育の未来について熟議しました。

学力全国一位の秋田県、実は、、、

秋田県は小中学校の学力全国一位で、教育レベルも世界的にみて高水準といわれています。一方、高校の学力は全国43位。「お金がない」「環境がない」といった課題にも直面しており、改善の余地が指摘されています。

少子高齢化の問題や、AIなどのデジタル技術の発達によって「求められる人材像」が変わりつつある現代。高まっているのが、「地域と密着しながら高校生のやりたいことをなんでも体験できる」教育の価値です。「秋田ではできない」ではなく、むしろ「秋田だからこそできる」教育の形が模索されています。

羽後高校は、秋田県の希望になる!?

羽後高校は5年前から慶應大学と連携し、「自分とは何か」を探究する授業や、商品開発や空き家活用といった地域密着型のプロジェクトを実施。5教科の勉強とは異なる多様な経験ができる学校として、魅力化を推進してきました。

そうした取り組みが実を結び、羽後高校の入学者数は5年前から1.5倍に増加。令和5年度には、秋田県内の高校入学者数が総じて減少傾向にある中で39名の新入生を迎えました。「廃校寸前の高校」だった羽後高校は、秋田県からも「地域に貢献することのできるモデル校」として注目されています。

秋田県副知事「羽後高校のように、秋田県だからこそできる総合型学力を」

羽後町の希望であるとともに、秋田県の希望でもある羽後高校。今回のシンポジウムではこうした「高校魅力化」の実践を、秋田県内で教育に携わる方々に報告しました。猿田副知事は羽後高校の取り組みや県内各校の動向を踏まえ、「今後は羽後高校のように、秋田県だからこそできる総合型学力を育む学校でなければならない」と述べました。

別会場では、羽後学プロジェクトの概要を展示ブースで発表。羽後町外の方が数多く来場し、プロジェクトメンバーからの説明に熱心に耳を傾けました。また、「羽後町でこんなことやっているんだ、すごい」「自分たちも高校生だが、やりたいことを見つけていきたい」といった嬉しい感想が寄せられました。

長谷部葉子研究会集合写真

【羽後高校魅力化プロジェクトが提供する価値】

羽後高校プロジェクトが考える「魅力的な高校」のあり方

うごPでは、羽後高校で実現したい「魅力的な高校像」を、以下のように考えています。

【①生徒がやりたいと思うことに主体的に取り組むことができる高校】

「高校の中で生徒自身がやりたいことに打ち込めているとき、充実した高校生活を送れているといえるのではないか」という発想のもと、やりたいと思うことを秘めている高校生と、多岐にわたる活動をしている大学生とが関わることで、高校の中でもやりたいことを形にできる、そんな充実した高校生活をつくりあげていきたいと考えています。

この高校像に基づいた活動→みらいクリエイティ部

【②普段と全く異なる環境に身を置いたり、多種多様なバックグラウンドをもった人間と交流する機会のある高校】

インターネットの発達にともない、『どんな職業があるか』『どんな生き方があるか』といった事柄は情報として収集できるようになりました。しかし、本当に重要なのは、あらゆる進路選択肢について文字面の情報以上の、実感を伴った理解がなされることではないでしょうか。人生の大きな選択を迫られる高校生の期間に、普段生活しているところとは異なる場所へ行き、今まで出会ったことのないような人々に会うこと。それが、進路選択肢について実感を伴った理解をもつことに繋がり、社会というスケールのなかで自分のやることを見定めていくきっかけになると考えています。そして、私たち大学生はこのような機会を提供できると信じ、活動に励んでいます。

この高校像に基づいた活動→SFC宿泊研修

【③自分の人生を自分で決めるという意識を持ち、納得のいく進路選択をできるようになる高校】

集団生活を送っていると、「周りの動向に自分も流されてしまう」ということがしばしば起こり得ます。特に、高校生という多感な時期には、自分が他の人からどう思われているかということを気にしてしまいがち。そんな中で、自らの幸福な生き方に近づくためには、自分の判断軸に基づいて意思決定をしていくことが必要だと考えています。自分の判断軸・価値観がどんなものなのかをよく理解し、そのあとに待ちうける進路選択の場面において納得のいく決断をできるようになること。私たちは探究学習という形で、自分について理解し、将来について考える場を作り出しています。

この高校像に基づいた活動→羽後学

うごPでは、主に以上の活動を展開しています。現在は7名の大学生が、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスや羽後高校を拠点に活動しています。

【結びの言葉】

最後までお読みいただきありがとうございました。

5年間羽後町の皆様と続けてきた羽後高校魅力化プロジェクトは、秋田県から注目されるほどの大きな活動へと進化しました。それは、ひとえに皆様のご協力とご支援のおかげです。改めて感謝申し上げます。「廃校寸前の高校」から、「地域に貢献し得るモデル校」となった羽後高校。この事実を、多くの方に伝えることができました。

これからも、羽後高校をより「おもしろく」「はいってよかった」と思える素敵な高校にするために。そして、羽後町をより「おもしろく」「ここに生まれてよかった」と思える町にするために。学生一同、これからも羽後町という「第二のふるさと」に帰省させていただけたらと思います。これからも、よろしくお願い致します。

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記事制作:慶應義塾大学長谷部葉子研究会羽後高校プロジェクト
大沢香晴(総合政策学部3年)