【9月19日&20日|取材レポート】鎌鼬の里芸術祭2026・前編

9月19日と9月20日の2日間、羽後町の田代(たしろ)で「鎌鼬の里芸術祭」が開催されました。

舞台となる田代は、秋田県出身の舞踏家である土方巽の写真集「鎌鼬(かまいたち)」の撮影地。この土地に鎌鼬美術館が開館した2016年以来、継続的に開催されている芸術祭です。

今年の鎌鼬の里芸術祭では10周年を記念して、新たな取り組みもスタート。国内外からアーティストや来場者が集い、創作や交流が生まれた現地の様子を前編・後編の2本立てでお届けします。

まず前編記事では、2人の講師を招いた踊りのワークショップと、芸術祭1日目の様子を写真とともにお届けします。

五感を研ぎ澄ます、舞踏ワークショップ

例年、鎌鼬の里芸術祭では様々な舞踏家がワークショップを開催しています。今年は芸術祭前日の9月18日(金)と、初日の9月19日(土)の二日間にワークショップが行われました。いずれも踊りの初心者から参加OK。町内だけでなく県外からも参加者が集いました。

9月18日(金)に講師を務めたのは有科珠々(ありしな じゅじゅ)さん。フランスを拠点に、国境を超えて公演や教育に取り組む舞踏家です。

昼過ぎ、田代公民館に集まった参加者たち。まずは呼吸、基本姿勢やストレッチなどを行います。

続いては二人一組でブラインドウォーク。一人が目隠しをして、もう一人がリードします。

途中で目隠しを交代して、各20分ずつ地域を散策。ワークが終わると公民館に戻り、輪をつくって感想を共有します。

普段、どれだけ視覚を頼りに行動しているのか。視覚が無いからこそ感じられた風の流れや水の音。ワークを通して得られた様々な気づきが寄せられました。

後半は音に合わせて体を動かす時間。二人一組で。時間を決めて。各々の動きで。テーマに合わせて動く中で、体の動きもダイナミックになっていきます。

今回のワークで有科さんが重視したのは「五感を強化する」こと。折しもAI(人工知能)に関する書籍を出版予定という有科さん。書籍の制作過程で得た、「『感じること』は人間にしかできない」という実感が、今回のワークショップに繋がりました。

全体の締めは、有科さんの踊りの原点である日本舞踊のお辞儀で。4時間にわたる充実のワークが終了しました。

ダンスは世界を味わうためのツール

日付は変わって、9月19日(土)。この日のワークショップ講師は、アーティスト・イン・レジデンスにも参加した村上渉(むらかみ わたる)さん。大阪を拠点に国内外で活動するダンサーです。

まずは、感じながら歩いてみることから。続いて、ホールの床に寝そべって空間を感じてみる。再び立ち上がり距離を縮めて、ハイタッチをしたり、お互いの肩に触れてみたり。今度は全く触れないように気をつけながら、距離を空けず動く…。

初めは静まり返っていた空間に、少しずつ動きが生まれていきます。

アーティスト・イン・レジデンスのため、本番1週間前に現地入りした村上さん。しかし、雨続きの天候や慣れない共同生活の中で思うようにアイデアが浮かばず、まずは生活を整えることに注力したといいます。

ワークショップについても事前にイメージを持ちつつ、当日感じることを大切に。参加してくれる人の雰囲気や動き方をみて、内容を選びながら進めていきました。

参加者の印象について「じっくり感じる人が多かった」と語る村上さん。最初は静かだけれど慣れるとだんだん個性が出てくる、そんな感触を得たといいます。

ワークが終わる頃には、冒頭の静けさは何処へやら。参加者から「また羽後町でワークショップを開催してほしいです!」という声も。名残惜しさとともに、鎌鼬の里芸術祭2026の2つのワークショップが終了しました。

多方面から舞踏に触れる、芸術祭1日目

ここからは、鎌鼬の里芸術祭2026の1日目の様子をダイジェスト版でお届けします。

まず午前中は、旧長谷山邸での映画上映から。フランスで生きる日本人舞踏家・有科珠々さんを追ったドキュメンタリー映画。今年の春にVanessa Bozza監督によって撮影された作品で、なんと今回が日本初上映。本映画祭のために日本語字幕が付けられたそう。

舞踏の原点である秋田で公開したいとの思いから、今回の鎌鼬の里芸術祭での上映会が実現しました。

続いて広場にて、羽後町の町指定無形文化財である元城獅子舞が披露されました。

ランチを挟み、午後の冒頭は旧長谷山邸の座敷でのシンポジウムから。

舞踏の研究や執筆に尽力されてきた慶應大学教授の小菅隼人さんと、土方アーカイブに携わってきた慶應大学アーツセンターの森下隆さんがゲスト登壇。「舞踏の力」をテーマに、2025年出版の『BUTOH:11人の舞踏家に聞く』の内容にも触れながら講演および対談を行いました。

小菅隼人さん(向かって左)と、森下隆さん(向かって右)

その後は旧長谷山邸の敷地内で、国内各地を拠点に活動する舞踏家らによる踊りが披露されました。

三角標

雪雄子

森繁哉

シームレスな表現に引き寄せられる空間

今年の芸術祭では、国内外で活躍する舞踏家に加え、多様なカルチャーにルーツを持つ表現者が集結。ストリートダンスや音楽など、それぞれの背景から表現力豊かなパフォーマンスを披露しました。

とある出演者のステージにはマイクが。ギターを弾いて歌ったかと思うと、今度はステージを降りて、旧長谷山邸の入口にあるはさを駆け上り…。予測不能な動きに、観客も巻き込まれながら見入ります。

saekiosamura

また、ステージや踊りの枠に止まらないパフォーマンスも。鎌鼬芸術祭のエントランスで踊り始めた演者の踊りに引き寄せられ、ゾロゾロと観客が移動。周辺の石垣や地べたに腰を下ろします。

Runa Miura

他にも、秋田県内で活動するミュージシャンによるラップやセッションが行われ、周辺一帯が踊りと音楽の輪に満たされました。

mori3000

エネルギー浮浪

芸術祭2日目の内容は、後編記事にて!

ワークショップと映画上映に始まり、シンポジウムや個性豊かな公演まで。多種多様なプログラムが行われ、盛り上がりを見せた芸術祭初日。午後18時の日没まで目一杯のタイムテーブルを網羅して、1日目が無事終了しました。

後編記事では、10周年を迎えた芸術祭による新たな試みと、芸術祭2日目の様子をお届けします!

………………………………………….

UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)

SHARE
コピーしました!