舞踏家の土方巽を収めた写真集「鎌鼬(かまいたち)」の撮影地、羽後町田代(たしろ)。この地域を舞台に毎年9月に行われるのが、国内外から舞踏家らが一堂に会する「鎌鼬の里芸術祭」です。
10周年の節目となる今年はパフォーマンスや蚤の市などさまざまな催しが予定されています。日程は2026年9月19日(土)・20日(日)の2日間、旧長谷山邸と周辺地域を会場に行われます。
芸術祭の会場となる旧長谷山邸と鎌鼬美術館
加えて今年初の試みとなるのが「アーティスト・イン・レジデンス」。アーティストが地域に滞在しながら作品制作やリサーチを行う取り組みです。
今回の芸術祭ではデザイナー、パフォーマー、ダンサーの3名が本番1週間前から田代に滞在。町の人や地域と関わりながら、リサーチや会場準備等に取り組んでいます。現地の様子を取材しました。
地域と向き合い、鎌鼬の里芸術祭の空間を作り上げる
鎌鼬の里芸術祭まで2日に迫った9月17日(木)。まず訪れたのは、アーティスト滞在場所からほど近いアトリエです。中に入ると、すでに滞在期間を通して制作された看板が並んでいました。当日運行するシャトルバスのバス停や、踊る場所を示す案内板など。
田代の空間をボーダーレスに用いる、鎌鼬の里芸術祭に欠かせない標示です。
滞在期間中に制作された看板
制作物全体のデザインを仕切るのは森田聖さん。東京と金沢を拠点に活動するデザイナーで、今年の芸術祭のメインビジュアルも手がけた人物です。
森田聖さんがデザインしたメインビジュアル
ちなみに羽後町を訪れるのは2度目とのこと。今年2月ぶりの滞在となった今回、雪が積もり真っ白に染まっていた前回からの対照的な町の風景に驚かされたといいます。
メインビジュアルの制作には一ヶ月間をかけ、芸術祭の実行委員などから舞踏や地域の暮らしについて丁寧にヒアリング。また、羽後町で実際に使われている道具や自然物を取り寄せてビジュアルの制作に臨みました。
今回の滞在制作でも羽後町の素材を中心に使用しています。例えばメインゲートの柱には、かつて田植えの際に土壌に印をつけるために使われていた田定規を採用しました。地域にある素材の質感を受け取りながら、鎌鼬の里芸術祭の空間全体を立体的に編み上げていきます。
メインゲートの柱を制作中の森田聖さん
解体した古民家の端材なども釘や汚れを落として再利用
異なるアーティストが一軒家で共同生活
また、3名のアーティストは芸術祭当日まで寝食を共にします。この日のランチでは、パフォーマー・Gaspar Lizano (ガスパール・リサーノ)さんが故郷スペインの国民食であるトルティージャを振る舞いました。
薄く切ったパンにオリーブオイルをあえたトマトバジルをトッピング、その上からトルティージャをのせていただきます。初めての味に恐る恐る手を伸ばしつつ、口に入れると、優しい食感とその美味しさに思わず「¡Qué rico!(ケ・リコ!)」。
トルティージャを作るGaspar Lizanoさん
パフォーマーとダンサーのふたりは、空き時間を利用して周辺地域を散策。かつて土方巽が訪れ、踊った土地の空気を感じながら、芸術祭に向けて踊りを作り上げていきます。
アーティストの滞在場所「マオの家」からの景色
あたりが次第に暗くなり、肌寒くなってきた夕刻。マオの家の前には、音楽に合わせて踊る人の姿が。芸術祭実行委員を務める小林芽生(かなる)さんと、大阪を拠点に活動するダンサー・村上渉さんです。
村上渉さんは初めての羽後町滞在とのこと。今年の芸術祭では、9月20日(日)に踊りを披露します。また、9月19日(土)午前には田代公民館にてワークショップも開催予定です。
「マオの家」の玄関先で踊る2人
鎌鼬の里芸術祭は今週末、2日間の開催
さまざまな地域から集まったアーティストが、地域の人や環境と関わりながら制作を行う。鎌鼬の里芸術祭を起点に、新たな創作の形がここ田代から生まれています。
芸術祭当日の2日間は、さらに多くのアーティストや出店者が集結。黄金色に染まった秋の羽後町を彩ります。一体どんな空間になるのか、ぜひ会場で目撃してください。鎌鼬の里芸術祭、当日の詳細はこちらから。
アーティスト・イン・レジデンス参加者
森田聖
2024年、御茶の水美術専門学校卒業。同年7月に「Ruler Design Office」として開業。現在は東京と金沢の二つの街を拠点に、グラフィックデザイナーとして活動している。文字を大切に丁寧に扱う、シンプルなタイポグラフィデザインを主軸としており、コンセプトの言語化から、ロゴ、名刺、ポスター、冊子などの印刷物、アートワーク制作までを手がけている。

Gaspar Lizano
Gaspard is drawn to the space between the intimate and the unsettling, using the body and voice as territories for memory, tension, and transformation.
He explores what lies beneath the surface—desire, discomfort, vulnerability, and the things that resist being named.
His work is shaped by fragmentation, excess, contradiction, and the beauty that emerges through distortion, decay, and the grotesque.
Through performance, Gaspard blurs the boundaries between reality and fiction.

村上渉
現在は身体開発に励みながら、踊りに対する思い込みを外すことで、この心身から溢れてくる自由な踊りをそのまま表現できるんじゃないかと日々探究中です。過去にはストリート(主にハウス)のバトル でたくさん優勝したり、米津玄師のツアーダンサーを務めたり、康本雅子や島地保武の作品に出演したり、太極拳や合気道を学んだりしてきました。結果や経歴は「どやっ!」ってできるけど、価値があるのはその過程の経験で、文字情報としてはあんまりその人を表せていないなと思ってます。踊りは世界を味わう最高のツール。大阪育ち、大阪在住。

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UGONEWS編集部(地域おこし協力隊|岸峰祐)



